高年齢者雇用状況等報告とは
事業主は、毎年6月1日現在の「高年齢者の雇用に関する状況(高年齢者雇用状況等報告)」を、ハローワークを経由して厚生労働大臣に報告することが法律で義務づけられております。この高年齢者雇用状況報告には、企業における65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況や、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況、定年年齢を何歳にしているかなどの情報を記載して報告するものであり、厚生労働省や各都道府県労働局等で、その集計結果が公表されます。
高年齢者雇用確保措置とは
少子高齢化が急速に進行し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある誰もが年齢によらず能力を十分に発揮して高年齢者が活躍できる雇用環境整備について定めた法律として『高年齢者雇用安定法』があります。この法律では、企業が義務として高年齢者雇用について取り組む事項などが規定されています。
- 定年年齢について
企業は定年年齢を定める場合、60歳を下回る年齢を定年とすることはできない。 - 65歳までの雇用確保措置(企業の義務)
定年を65歳未満としている企業は、高年齢者が活躍できる雇用環境の整備として以下のいずれかを実施しなければならない。
(1)65歳までの定年引き上げ
(2) 定年制の廃止
(3)65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入 - 70歳までの就業機会の確保(企業の努力義務)
65歳までの雇用確保(義務)に加えて、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、以下のいずれかの措置を講ずるよう努めなければならない。
(1)70歳までの定年引き上げ
(2) 定年制の廃止
(3) 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
(4)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
(5)70歳まで継続的に以下のA、Bに従事できる制度の導入
・A:事業主が自ら実施する社会貢献事業
・B:事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
福岡労働局発表の資料からみる高年齢者雇用の傾向(令和5年)
従業員21人以上の企業9,629社から提出された令和5年の高年齢者雇用状況報告から、企業における高年齢者雇用等に関する措置の対応状況が明らかになっています。
(1)65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%
- 「継続雇用制度の導入」により実施している企業が69.2%[前年より1.3ポイント減少]
- 「定年の引上げ」により実施している企業は26.8%[前年より1.2ポイント増加]
- 「定年制の廃止」は4.0%[前年より変動なし]
(2)70 歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況
- 70 歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は 30.6%[2.8 ポイント増加]、中小企業では31.2%[2.9ポイント増加]大企業では21.1%[1.1ポイント増加]
- 措置内容別に見ると、定年制の廃止(386社)は4.0%[変動なし]、定年の引上げ(238社)は2.5%[0.2ポイント増加]、
- 継続雇用制度の導入(2,320社)は24.1%[2.6ポイント増加]、創業支援等措置の導入(0社)は0.0%[変動なし]。
(3)企業における定年制の状況
- 65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は30.7%[1.2ポイント増加]
- 定年制を廃止している企業(386社)は4.0%[変動なし]
- 定年を60歳とする企業(6,429社)は66.8%[1.4ポイント減少]
- 定年を61~64歳とする企業(240社)は2.5%[0.2ポイント増加]
- 定年を65歳とする企業(2,220社)は23.1%[1.2ポイント増加]
- 定年を66~69歳とする企業(116社)は1.2%[0.1ポイント減少]
- 定年を70歳以上とする企業(238社)は2.5%[0.2ポイント増加
(4)66歳以上まで働ける制度のある企業の状況
- 66歳以上まで働ける制度のある企業は、44.6%[2.4ポイント増加]
- 70歳以上まで働ける制度のある企業は、43.0%[2.4ポイント増加]
(5)高年齢常用労働者の状況
- 31人以上規模企業における60歳以上の常用労働者数は約18万3千人で、平成26年と比較すると、約7万人(60.3%)増加している。
- 21人以上企業規模における60歳以上の常用労働者数は約19万5千人で、令和3年と比較すると、約5千人(2.5%)増加している。
高年齢者が長く働ける環境を整備する企業が増えています
統計からは、少子高齢化による労働者の年齢構造の変化に対し、労働者が長く働ける雇用環境の整備に取り組んでいる企業が増えていることがわかります。70歳までの雇用確保措置は、令和3年4月1日施行の高年齢者雇用安定法改正により、企業の努力義務となりましたが、業種や職種によっては若年層が多い職場や年齢層が高めである職場もあるなか、他社の傾向を見極めつつ対応しようとお考えの企業も多かったと思います。今回ご紹介した統計資料を踏まえ、今後の採用方針や雇用環境の見直しなどにより、自社に必要な労働力をどのように組み立てていくかを今一度検討してはいかがでしょうか。
定年年齢や、継続雇用で働くことができる年齢の延長をする場合には、就業規則の見直しも漏れなく行うことが必要です。労働者の雇用や規則の変更のことで、ご疑問等がありましたらお気軽にお問合せ下さい。
<参考リンク>
福岡労働局:令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します。
独立行政法人高齢・障害・休職者雇用支援機構