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【業務改善助成金】賃上げした事業場の設備投資等を支援

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【業務改善助成金】賃上げした事業場の設備投資等を支援

はじめに

地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金として、各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められており、毎年10月から都道府県ごとに順次改定が行われています。先月6月25日(令和6年)には、令和6年度の地域別最低賃金の改定目安に関する議論が厚生労働省の中央最低賃金審議会で開始されました。企業にとっては賃金の引上げと生産性の向上を図ることが重要な課題のひとつであり、今回の記事では、賃金の引上げと生産性向上のための設備投資等のための公的支援について解説いたします。

業務改善助成金とは

業務改善助成金は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等(機器・設備の導入など)を行った中小企業・小規模事業者等に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。

事業場内最低賃金の引き上げ計画 + 設備投資等の計画 ➡ 計画の承認 ➡ 実施 ➡ 業務改善助成金支給

対象事業者・申請の単位

対象事業者

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
  • 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
  • 工場や事務所などの労働者がいる事業場ごとに申請
  • 事業場内最低賃金とは

事業場で最も低い時間給を指します。事業場内最低賃金の計算方法は、地域別最低賃金(国が例年10月頃に改定する都道府県単位の最低賃金額)と同様の方法で算定されます。
福岡県内に所在する事業場の場合、投稿日現在の地域別最低賃金(福岡県)は941円であり、これと事業場内最低賃金との差額が50円以内であることが要件のひとつとなります。

助成上限額・助成割合

助成される金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率をかけた金額(助成率×かかった費用)と助成上限額(下表)とを比較し、いずれか安い方の金額となります。

  • 助成上限額

本助成金の上限額は、賃金の引き上げ額や引き上げる労働者数により異なります。賃金の引き上げ額に応じたコースが区分されており【30円コース】【45円コース】【60円コース】【90円コース】が設けられています。下表は、事業場内最低賃金を30円引き上げる場合の助成額の上限です。

厚生労働省「令和6年度業務改善助成金のご案内」より一部抜粋
  • 助成率

本助成金では、生産性向上に資する設備投資等(機器・設備の導入など)の一部が助成されますが、その割合は事業場内最低賃金の額によって異なります。

  • 900円未満:9/10
  • 900円以上950円未満:4/5(生産性要件を満たすと9/10)
  • 950円以上:3/4(生産性要件を満たすと4/5)

なお、上記の「生産性」とは、企業の決算書類から算出した労働者1人当たりの付加価値のことをいいます。助成金の支給申請時の直近の決算書類とその3年度前の決算書類に基づいて算出した生産性を比較したときに、伸び率が一定の水準を以上となっている場合などに該当すると「生産性要件を満たす」として、上記の()内に記載の助成割合が適用されます。

対象となる設備投資など

本助成金の対象となる設備投資等について、厚生労働省が発表している過去の事例には、下記のようなものがあります。

  • 一度に大量の重量物を運ぶことができ作業時間が短縮した
    フォークリフト、運搬用冷凍庫
  • 精算業務が自動化され時間短縮されることにより顧客の回転率も向上した
    POSレジシステム、自動つり銭機
  • 仕込み時間・調理時間が短縮され一度に製造できる量も増えて効率が上がった
    ミキサー、焙煎機、食品裁断機
  • その他
    顧客管理システム、会計・仕入・販売システム、食品卸売システム

申請のながれ

事業場所在地を管轄する都道府県労働局に、下記の手順で申請等を行います。

  • 交付申請
    交付申請書・事業実施計画書等を都道府県労働局に提出
  • 交付決定
    交付申請書等を審査、審査結果の通知
  • 事業の実施
    申請内容に沿って事業を実施(賃金の引き上げ、設備の導入、代金の支払)
  • 事業実績報告
    労働局に事業実績報告書等と助成金支給申請書を提出
  • 交付額審査
    事業実績報告書等を審査し、適正と認められれば交付額の確定と助成金の支払いを実施
  • 助成金支給

賃金引き上げに当たっての注意点

  • 地域別最低賃金の発効に対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げる必要があります。
  • 雇い入れ後3カ月を経過した労働者の事業場内最低賃金の引き上げを行う必要があります。
  • フルタイム勤務者の事業場内最低賃金の引き上げについては、所定労働時間・日数の減少を伴わないものであること。
  • 引き上げ後の事業場内最低賃金額と同額を就業規則等に定める必要があります。
  • 過去に本助成金を申請した事業場も再申請が可能ですが、令和6年度内の申請は1回までです。
  • 交付決定前に助成対象設備の導入を行った場合は助成の対象となりません。
  • 本記事に記載した助成金のルールは登校日現在の最新の内容です。将来においてルールが変更となる場合もありますので、必ず最新の交付要綱・要領で助成要件をご確認ください。

おわりに

本助成金の令和6年度の申請期限は、2024年12月27日(事業完了期限は令和7年1月31日)までです。従業員の賃上げとともに、生産性の向上を図るための設備投資などをお考えの中小企業の事業主の方は、本助成金のご活用を検討してみてはいかがでしょうか。助成金には非常に細かな要件が設けられており、それらを踏まえて適切な取組みを行うことが重要です。自社では助成金に取り組むことができるだろうかとご疑問をお持ちの場合や、助成金申請へ向けた必要な取組についてご相談がある場合、ぜひ当事務所までお気軽にお問合せ下さい。

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