労働時間 監督指導

【令和4年度監督指導結果】違法な時間外労働

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【令和4年度監督指導結果】違法な時間外労働

全国の労働基準監督署が令和4年度に長時間労働が疑われる事業場に対して実施した監督指導の結果が発表され、監督指導の対象となった33,218事業場の42.6%にあたる14,147 事業場で違法な時間外労働が確認され是正・改善に向けた指導が行われていたことが発表されました。

監督指導の内訳

厚労省:長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します(令和5年8月3日付)

『労働時間』に関する違反事項には【1】36協定なく時間外労働を行わせたもの【2】36協定が無効なこと又は36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせていることにより違法な時間外労働があったもの【3】「時間外労働の上限規制を超えて労働させたもの」が含まれています。

 

時間外労働の上限規制の概要

企業が、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働と法定休日の休日労働を労働者に行わせるためには、労働者の過半数代表者との間で「時間外休日労働に関する労使協定(36協定)」を締結し管轄労働基準監督署へ届け出る必要があります(労働基準法第36条)。

ただし、36協定があれば際限なく残業や休日労働を行わせていいのではなく、上限が設けられています(原則「月45時間・年間360時間」

特別条項付き36協定を締結することで、月45時間を超える残業を年6回まで行わせることが可能ですが、この場合であっても上限が定められています。

※令和6年3月末まで時間外労働の上限規制の適用が猶予される一部の業種があります。

特別条項付36協定の上限規制

  • 1年の上限は法定休日労働を除き720時間以内であること
  • 単月で法定時間外労働と法定休日労働を合わせた限度時間は100時間未満であること
  • 1年間のうちどの2か月ないし6か月を平均しても時間外・休日労働の平均時間が月80時間以内であること
  • 時間外労働が月45時間を超えられる月数は年6ヶ月までであること

これらの要件を満たした特別条項付36協定の締結・届出を行い、定めた内容を守って労働者を働かせることが必須要件となっています(違反した場合の罰則:6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)。

全国の労働基準監督署が令和4年度に実施した監督指導で「違法な時間外労働があった」とされた企業のうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が(1)月 100 時間を超えるもの: 3,320 事業場(23.5%)(2)月 150 時間を超えるもの: 752 事業場( 5.3%)(3)月 200 時間を超えるもの: 168 事業場( 1.2%) となっており、厚生労働省では今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行う方針と発表されています。

 

特別条項付36協定は労使協定があるだけではNG

特別条項付36協定の締結・届出は、原則の時間外労働の上限(月45時間・年間360時間)を超えて労働者を働かせる場合には必ず行わなければならない事項ですが、運用面で気をつけなければならない事項があります。

特別条項付36協定には月45時間・年360時間を超えて労働をさせる場合の手続きについて定める欄があります。

この欄には「労働者代表への申入れ」や「協議」「通告」と記載されていることが多くあります。この手続きが行われないままに労働者を働かせてしまうと、「特別条項は適用されず、違法な時間外労働にあたる」として、労働基準法第32条(労働時間)と労働基準法第36条(時間外休日労働)の違反として書類送検された企業もあります(令和4年6月彦根労働基準監督署)ので、協定に定めた手続きや定めた時間数を守って運用するよう留意が必要です。

 

おわりに

労働基準法に基づいて企業と労働者の過半数代表が締結する労使協定は、締結して届け出ることができていても、必要な手続きを踏まなかったり、定めた内容のとおりに運用できていなかった場合には、行政調査時に無効と判断されることがあります。36協定以外にも、労働関係諸法令に基いた様々な労使協定がありますが、協定を締結する時の労働者の過半数代表は適正に選出されているでしょうか?選挙や挙手といって民主的な方法によって選出されない場合、協定が効力を有しないことにもなってしまいますので今一度、自社では適切に労使協定が締結され、必要な届出が行われ、適切に運用されているかを再確認することをおすすめします。

 

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