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差額を支給して修正完了…ではない?昇給漏れが引き起こす様々な影響

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差額を支給して修正完了…ではない?昇給漏れが引き起こす様々な影響

はじめに

4月や1月は、昇給を実施する会社が多い時期です。
一方で、昇給の時期は、給与計算や人事考課の結果反映に関する間違いが起きやすい時期でもあります。

昇給漏れや昇給ミスは、その月の給与差額を修正すれば終わる問題ではなく、場合によっては残業代、社会保険手続き、算定基礎届などにも影響が広がることがあります。 今回は、給与改定で起こりやすい昇給ミスについて、なぜ起きるのか、後でどんな影響が出るのか、あわせて確認しておきたい実務対応を見ていきます。

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なぜ昇給漏れが起きるのか

昇給漏れは、入力ミス・チェック漏れといった単純な作業だけが原因で起こるとは限りません。
昇給対象者の共有漏れ、昇給額の伝達ミス、反映時期の認識違い、残業単価や手当計算への影響の見落としなど、昇給の決定から給与反映までの流れが曖昧なときに起こりやすいものです。

人事考課の結果は出ている、昇給の額が決まっているけれども、その内容が給与計算担当まで正確に共有されていないと、昇給漏れが起きやすくなります。

口頭では「今月から上げる」と言っていても、一覧表や本人への昇給通知などが残っていないと、給与担当者が正確に反映できないことがあります。人事評価制度がある会社の場合は、人事考課の結果と賃金額について記載した「等級・号俸のお知らせ」や「昇給通知」といった通知が行われていることが多く見られます。一方で、人事評価制度などがない会社の場合は昇給が通知されていないことも多く、社内で把握できる情報も限られ、間違いも生じやすくなることもあります。

昇給漏れがあったときの対応は、基本給や手当の額を修正するだけで終わるとは限りません。昇給にともない、賞与や社会保険手続きなどの影響が生じないかまで含めて見ておかないと、後に別のズレが見つかることがあります。

昇給漏れが後で見つかると、どんな影響があるのか

昇給漏れが後で見つかった場合、まず不足していた賃金の支払いが必要になります。
しかし、影響はそれだけではありません。

本来支払うべき額より少なく支給していた場合、不足分の精算が必要になります。昇給漏れは、その月の給与差額の問題にとどまらず、本来支払われるべき賃金の一部未払いにつながることがあります。

基本給や一定の手当が変われば、時間外労働・休日労働・深夜労働の単価にも影響することがあります。

昇給漏れにともない、給与計算対象月の割増賃金の計算単価にも差額が生じることになります(通勤手当、家族手当などの割増賃金の計算基礎から除外することができる一定の手当を除く)。昇給対象月以降に、時間外労働や深夜労働、休日労働が行われていた場合、昇給前の単価で割増賃金を計算していると、賃金の一部未払いも生じていることになります。そのため、昇給漏れの内容によっては、残業代まで遡って再計算が必要になることがあります。

固定的賃金の変動があり、出勤日数など一定の要件を満たしてそれが3か月連続する場合には、社会保険の月額変更届の対象になるかどうかの確認も必要です。

なお、社会保険の手続では、給与計算の誤りにより、さかのぼって修正して賃金を支給した場合には、支給した月ではなく、本来支給すべき月の給与として算入する取扱いとなっています。

たとえば1月払いの給与から昇給漏れが生じていた場合には、1月からの連続する3か月間で月額変更届の要件に該当するかどうかを確認する必要があります。
また、昇給漏れが4月〜6月の報酬に影響していた場合には、算定基礎届の届出内容にも影響する可能性があります。すでに届出をしている場合でも、内容によっては再確認や修正が必要になることがあります。

賃金台帳や給与明細の内容と、年金事務所への社会保険の届出内容が一致していない場合、年金事務所の調査時などに説明や修正を求められることがあります

昇給は、従業員にとって関心の高い事項です。
「上がると聞いていたのに反映されていない」「自分だけ昇給がなかった・少なかった」「社会保険の報酬月額が変われば、出産手当金や傷病手当金、将来の年金額にも影響するのではないか」となどの考えから、会社への不信感にもつながりやすくなります。

意外に間違いやすいのは「いつから昇給」か

実務上見落としやすいのが、いつ昇給したことになるのかという点です。たとえば、

  • 4月適用で5月支給から反映するのか
  • 4月払いの給与から上がるのか
  • 人事考課の結果が出た時点で決まっていたのか

によって、給与計算上の扱いや、社会保険手続きへの影響の見方が変わることがあります。就業規則に定められている昇給時期の解釈や時期のズレがないかも確認しておきましょう。

昇給漏れを防ぐために確認しておきたいこと

昇給漏れを防ぐためには、次のような点をあらかじめ整理しておくことが大切です

  • 昇給を誰が決定するか
  • いつ決定するか
  • 適用日はいつか
  • 何月支給分から反映するか
  • 昇給対象者・昇給額をどのように共有するか
  • 昇給通知や一覧表をどう残すか
  • 給与計算担当へどう引き継ぐか
  • 残業単価や社会保険手続きへの影響確認を誰が行うか
  • 就業規則・賃金規程の内容と、実際の運用が一致しているか

昇給にともない行う必要がある人事労務の対応は、社長・人事担当・保険手続の担当・給与担当の誰か1人だけで完結するものではありません。

特に、給与計算や保険手続きを自社で行っている会社では、昇給の反映漏れがその月の給与だけでなく、残業単価、社会保険手続き、算定基礎届や年度更新の集計にも影響していないかまで確認しておくと安心です。

最後に

昇給漏れや昇給ミスは、単なる給与担当者の単純なミスとして片付けられないことがあります。 その背景には、

  • 就業規則や賃金規程の書きぶりが曖昧
  • 昇給決定や通知の流れが整理されていない
  • 給与反映と社会保険手続きが切り離されている

といった、昇給に関する情報が社内で一元的に整理されず、昇給額の決定・通知・給与反映・手続き確認が別々に動いている状態があることも少なくありません。

また、4月の昇給漏れが後で見つかった場合、不足賃金の支払いだけでなく、残業単価の見直し、算定基礎届や月額変更届、年度更新の集計への影響確認が必要になることもあります。
つまり、昇給ミスは「その月の給与の話」で終わらず後の手続きや説明負担にもつながり得るということです。

給与計算を自社で行っている場合や、昇給の決定・通知・反映の流れが担当者任せになっている場合には、この機会に一度、賃金規程、昇給通知、給与計算、社会保険手続きまで含めた流れを点検してみてもよいかもしれません

エスマイルでは、こうした賃金ルールや給与計算、労務実務の整理も含めてサポートしています。詳しくは、労務顧問のページ給与計算のページ でもご案内しています。

  • この記事を書いた人

エスマイル社会保険労務士事務所 社会保険労務士 三浦 敬子

北九州・小倉南区を拠点に、中小企業の労務顧問、就業規則、給与計算、助成金などを支援。制度説明だけで終わらず、経営者の悩みや迷いを整理し、次に何をすべきかが見える支援を大切にしています。
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