両立支援(育児・介護・治療)

従業員から妊娠の報告を受けたら|産休前に会社が確認したい母性健康管理の対応

  1. HOME >
  2. NEWS&TOPICS >
  3. 両立支援(育児・介護・治療) >

従業員から妊娠の報告を受けたら|産休前に会社が確認したい母性健康管理の対応

はじめに

従業員(または従業員の配偶者)から妊娠・出産等の報告を受けたとき、事業主には、育児休業や出生時育児休業(産後パパ育休)、休業期間中の社会保険料の免除や育児休業給付金などについて個別に周知し、制度利用の意向を確認することが義務付けられています(育児介護休業法第21条)。

これとは別に、妊娠中の女性従業員が安心して働き続けられるようにするため、会社に対応すべき措置が法令で定められています。妊娠中の体調や医師等の指導に応じた適切な対応を取ることは、事業主に課された義務への対応というだけでなく、休業取得から復職までを見通しやすくするうえでも大切です。

この記事では、妊娠の報告を受けたときに会社が押さえておきたいことと、母性健康管理措置をめぐって実務で気を付けたい点を整理します。

妊娠の報告を受けたときに確認しておきたい母性健康管理措置】とは

妊娠_育児

妊娠の報告を受けたとき、会社としては、産前産後休業や育児休業などの休業制度、社会保険料の取扱い、雇用保険からの給付に意識が向きやすいと思います。もっとも、休業に入る前の段階でも、妊娠中の体調や医師等の指導内容によっては、会社が就業上の措置を講じる必要が生じることがあります。そのため、休業制度だけでなく、妊娠中の就業上の配慮についても、あらかじめ把握しておきたいところです。

男女雇用機会均等法では、事業主の義務として母性健康管理に関する規定が置かれています。母性健康管理措置とは、妊娠中または出産後1年以内の女性労働者が、健康診査や保健指導に基づく医師等の指導事項を事業主に申し出た場合に、会社が必要な措置を講じるものです。これは、会社が任意に「配慮してあげるかどうか」ではなく、法令上、事業主に求められている対応です。 主な措置としては、次のようなものがあります。

女性労働者が健康診査や保健指導を受けるために必要な時間を確保する措置です。企業は、女性従業員から妊産婦健診や保健指導を受けるために必要な時間を確保するために求められた場合には、妊娠週数に応じてそのための時間を確保しなければなりません。取得単位(半日、時間数など)は、労使で話し合うことが望ましいとされています。

医師等から勤務に関する具体的な指導があった場合、会社はその内容に応じた措置を講じる必要があります。主なものは次のとおりです。

妊娠中の女性労働者から、医師等の指導事項に基づいて通勤負担の軽減を求められた場合には、通勤ラッシュを避けるための時差出勤、勤務時間の短縮、交通手段や通勤経路の変更などの措置を講じる必要があります。

妊娠中の女性従業員から求められた場合、勤務時間中に適宜休憩を取れるようにする措置です。休憩時間を長くする、回数を増やす、休憩時間帯を変更するなど、体調に応じた対応が考えられます。

妊娠中または出産後の症状等に対応する措置として、妊娠中及び出産後1年を経過していない女性労働者から求められた場合、身体への負担が大きい作業の軽減、勤務時間の短縮、休業などが必要になることがあります。業務内容によっては、配置や担当の調整も考えられます。

このほか、労働基準法にも母性保護規定があります。たとえば、妊産婦の危険有害業務の就業制限、妊娠中の女性が請求した場合の軽易業務への転換、産前6週間(多胎妊娠は14週間)・産後8週間の休業などです。

企業があらかじめ把握しておきたいこと

点検

母性健康管理措置は法令上の制度ですが、実務では対応時に行き違いが生じやすい場面も少なくありません。

女性労働者が健康診査や保健指導を受けるために必要な時間を確保する措置です。企業は、女性従業員から妊産婦健診や保健指導を受けるために必要な時間を確保するために求められた場合には、妊娠週数に応じてそのための時間を確保しなければなりません。取得単位(半日、時間数など)は、労使で話し合うことが望ましいとされています。

通勤緩和や勤務時間短縮の場面では、短くなった時間の賃金をどう扱うかが問題になります。法令上、直ちに賃金の支払い義務まで定められているわけではありませんが、「当然に無給」と即断するのではなく、法令の趣旨と自社規程の両方を確認しておきたいところです。

母性健康管理に関する医師等からの指導や本人からの申出がないにもかかわらず、会社が短時間勤務や休業を強要することは、「労働契約内容の変更の強要」として、男女雇用機会均等法上の不利益取扱いに当たるおそれがあります。
会社が体調を考慮して勤務時間の短縮や通勤緩和などを提案すること自体はあり得ますが、本人の希望や医師の指導内容とずれたまま進めると、命令・強要・圧力と受け取られることもあります。そのため、一方的に決めるのではなく、本人の意向と医師等の指導内容を踏まえて整理することが大切です。

妊娠中の軽減措置を、期限のない雇用条件変更(雇用契約の見直し)として扱ってしまうと、産前産後休業や育児休業の終了後、どの労働条件で復職するのかについて認識のずれが生じることがあります。
育児休業後は、原則として休業前の労働条件を前提に復帰を考えるのが基本です。
そのため、妊娠中や出産後の一時的な配慮措置なのか、雇用条件そのものの変更なのかは、区別して整理しておきたいところです。

医師の指導内容と本人の意思を踏まえて進めることが大切

診断書

産後休業と危険有害業務の就業制限を除けば、医師等の指導や本人からの申出を前提に講じることになります。だからこそ、どのような措置を講じるかを会社だけで決めるのではなく、医師等の指導内容と本人の意思を確認しながら進めることが大切です。

実務では、医師等の指導事項を会社に正確に伝える方法として、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を活用することが考えられます。母健連絡カードは、医師等の指導事項や必要な措置を事業主が正確に把握するための様式として厚労省が示しているものです。女性労働者からこのカードが提出された場合、事業主はその記載内容に応じた適切な措置を講じる必要があります。 ここで大切なのは、医師等の指導内容を正確に共有し、本人の意思とあわせて、措置の内容・期間・賃金や勤務条件との関係を見える形で整理することです。プライバシーに配慮しつつ、必要な対応は適切に取れるようにしておきたいところです。

まとめ

母性健康管理措置や労働基準法上の母性保護規定は、会社が女性従業員に任意で配慮するかどうかではなく、法令上、会社が対応すべき実務の一つです。従業員から妊娠の報告を受けたときには、休業制度の案内だけでなく、医師等の指導に応じた措置が必要になる可能性も見据えておきたいところです。

大切なのは、措置内容を把握することだけでなく、本人からの申出や医師等の指示内容をどう受けるか、賃金や復職後の取扱いをどう整理するかまで含めて考えておくことです。

また、母性健康管理や母性保護に関する措置は、規程がなくても法令が優先して適用される場面がありますが、実際の運用を円滑にし、後の行き違いを防ぐためには、就業規則や関連規程の中で整理しておくことが望ましいとされています。 母性健康管理措置や育児・介護休業規程の見直しを進めたい場合は、就業規則作成・見直しページを、制度運用や個別対応まで含めて整理していきたい場合は、労務顧問ページもあわせてご覧ください。

  • この記事を書いた人

エスマイル社会保険労務士事務所 社会保険労務士 三浦 敬子

北九州・小倉南区を拠点に、中小企業の労務顧問、就業規則、給与計算、助成金などを支援。制度説明だけで終わらず、経営者の悩みや迷いを整理し、次に何をすべきかが見える支援を大切にしています。
プロフィールを見る

-両立支援(育児・介護・治療)