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ハラスメントゼロを目指して|事業主が押さえるべきポイント

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ハラスメントゼロを目指して|事業主が押さえるべきポイント

はじめに

近年、ハラスメントに対する意識が高まり、〇〇ハラと称される様々なハラスメントについて耳にすることが増えました。様々なハラスメントがありますが、人事労務の分野で問題となるのは、職場におけるハラスメントであり、投稿日時点で事業主に法的な義務を課してしるものとして、①パワーハラスメント(労働施策総合推進法第30条)、②セクシュアルハラスメント(男女雇用機会均等法第11条)、③妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(男女雇用機会均等法第11条の3、育児介護休業法第25条)があります。

また、2025年の通常国会において、顧客等からの理不尽な要求(いわゆるカスタマーハラスメント)の対策強化として、事業主に従業員の保護を義務付ける法改正案が提出される見込みであり、事業主には、今後より一層、従業員をハラスメントから守るための取組みが求められるようになります。

ハラスメント関係の法律の変遷

職場におけるハラスメント防止対策は、長年にわたる法改正によって強化されてきました。以下にその主な経緯をまとめています。

  • 昭和61年4月
    男女雇用機会均等法がスタート
  • 平成11年4月
    改正男女雇用機会均等法がスタート。セクハラ防止のための配慮が義務化。
  • 平成19年11月
    改正男女雇用機会均等法がスタート。男女双方に対する差別禁止。妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い禁止。セクハラ防止措置の実施が義務化。
  • 平成29年1月
    改正男女雇用機会均等法、改正育児・介護休業法がスタート。妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント防止措置(マタハラ防止措置)の新設。
  • 令和元年5月
    労働施策総合推進法で事業主のパワハラ防止に関する措置が義務化。
  • 令和2年6月
    大企業のパワハラ防止措置が義務化。セクハラ防止措置、マタハラ防止措置の強化。
  • 令和4年4月
    中小企業にもパワハラ防止措置の実施を義務化。

企業規模を問わず事業主のハラスメント防止措置が義務付けられており、企業においては職場でのハラスメントを防止するための対策を十分に行うことが必要です。

事業主の義務|パワーハラスメントの防止措置

パワーハラスメントとは、①業務上必要かつ相当な範囲を超えて行われる、②優越的な関係を背景とした言動であり、それによって③労働者の身体的または精神的な苦痛を及ぼしたことで就業環境が不快になり能力の発揮に重大な悪影響が生じる等の働くうえで見過ごせない程度の支障が生じることをいいます(『厚労省雇用環境・均等局:パワーハラスメントの定義について』より)。①~③までの要素を全て満たすものがパワーハラスメントとされており、厚生労働省から代表的な6つの類型が示されています。

パワーハラスメントは、労働者が働くなかで生じうる問題だからこそ、業務や人間関係などを把握する職場が、業務上必要な言動であったか等を判断して改善できる環境を整備することが重要との考え方から、事業主には下記の取組みを実施すべきとされています。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
    職場でのパワーハラスメントを許さない方針についてトップメッセージを発信する。パワーハラスメントが生じた場合の対処の方針・内容を就業規則等の文書に定めて労働者に周知・啓発する。
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する。相談窓口が適切に対応できるように必要な教育を行う。
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
    速やかに事実関係を確認する。事実が確認できた場合の被害者への配慮や、行為者に対する適切な対処をとること。事実が確認できなかった場合であっても、改善のための措置に取り組むこと。

厚生労働省の『事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針』(以下「パワハラ防止指針」)では、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じて周知すること、相談したこと等を理由とする解雇その他不利益取扱いをされない旨を定めて周知・啓発することについても、上記の措置とあわせて実施すべきとされています。

ゼロハラスメントを維持するために重要な取組

パワハラ防止指針では、パワーハラスメント防止のために事業主が行うべき措置だけではなく、取り組むことが望ましい事項についても示されています。労使ともに安全かつ生産性の高い仕事を行える職場を維持・向上するためには、法令で定められた義務を果たすだけではなく、ハラスメントのない職場を築くための継続した取組が重要です。

  • セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等と一元的に相談に応じる体制の整備
    パワーハラスメントだけではなく、セクハラや育児・介護休業法等に関するハラスメントにも、相談窓口を設けて労働者からの相談に適切に対応する義務が事業主には課されています。複数のハラスメントが絡み合っている場合も考えられることや、相談窓口が労働者にとって相談しやすい体制とするために、一元的な相談体制を整えておくことが早期の解決のためには効果的です。
  • 職場におけるパワハラの原因や背景となる要因を解消するための取組
    ハラスメントには、業務や人間関係、社風、従業員同士の価値観相違、時代の変遷など様々な背景が存在していることが考えられます。従業員の困りごとを把握し、支援可能な対策を検討・実行することで、問題が小さいうちに解決できるよう定期的な面談や研修の実施が望まれます。例えば、ハラスメントによる問題についての理解を深める研修や、適切な指導・教育について学ぶ場を設けること等が考えられます。。
  • 職場の意識を把握し改善する
    アンケートや意見交換の機会を設け、社内で不適切な行為がないかや、相談窓口が適切に機能しているか等について職場全体の意識を測り、必要な改善を行う。

おわりに

ハラスメント問題は、『自社に限って』『大した問題は起きない』との油断から生じてしまう傾向にあります。ハラスメント問題により、事業主・企業が法的な責任の追及されたり、行政からの指導を受けるリスクの他にも、職場環境が悪化したことで優秀な人材の流出や、企業イメージダウンなどの影響が懸念されます。ハラスメント防止のための措置義務を超えて、自社を労使ともに活動しやすい職場とするためのポイントは、計画的・継続的な改善取組であると言えます。

エスマイル社会保険労務士事務所は、職場の課題を把握し、改善を支援することで企業が理想とする職場を築くためのサポートを行っています。自社では、どのように改善したらよいのかとお思いの事業主・企業の方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。

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