はじめに

厚生労働省から2025年7月7日付で被扶養者に係る認定についての通達が発表されました。この通達により、2025年10月1日から、健康保険における「被扶養者」の認定基準のうち、「収入要件」が見直されることが正式に決まりました。これまで長年、就業調整の要因となっていた「130万円の壁」が、配偶者を除く19歳以上23歳未満の方に限り「150万円未満」まで緩和されることとなります。このたびの改正は、若年層の就労機会拡大と人手不足対策などを目的としており、人事・総務担当者や、被扶養者認定を希望する方にとって重要な制度変更といえるでしょう。今回の記事では、この改正のポイントと今後の実務について、わかりやすくご紹介します。
ここが変わります!改正のポイント

社会保険の被扶養者として認定されるための収入要件は、従来は「年収130万円未満」であることが基本条件とされてきました。これは学生であっても同様で、アルバイトの収入が130万円を超えると、親の扶養に入れず、本人が保険料を支払う必要があるという扱いでした。近年では、学費などを捻出するために働きながら学ぶ若年者も多く、働く時間を増やしたり最低賃金が上昇する環境下で、結果として年収が130万円を超え、被扶養から外れる方が多く生じていました。
このような現象や、働き手の不足という社会現象を踏まえ、今回の被扶養者の認定基準の変更が行われます。これにより、対象となる方は、これまでよりも多く働いても扶養の範囲内にとどまれる可能性が生まれます。
2025年10月以降の被扶養者認定における収入基準(被保険者と同一世帯にある場合)
| 被扶養者の年齢区分 | 年間収入の基準 | 備考 |
|---|---|---|
| 19歳以上23歳未満 | 150万円未満 | 収入が150万円未満で、かつ被保険者の収入の1/2未満等の要件を満たす場合に認定対象(障害をお持ちの方は180万円未満) |
| 上記以外 | 130万円未満 | 従来どおり130万円未満(60歳以上または障害をお持ちの方は180万円未満) |
※上記基準を満たさない場合でも、被保険者が家計を主に支えていることが客観的に認められる場合などは、例外的に被扶養者として認定される可能性もあります(個別判断による)。
対象者についての留意事項

- 配偶者は対象外です
この収入基準の緩和は、あくまで「被保険者の配偶者以外」の被扶養者が対象です。配偶者に関しては、これまでどおり「130万円未満(または180万円未満)」の収入要件が適用されます。
- 年齢の判定は「その年の12月31日時点」で行われます
たとえば、2026年10月に19歳の誕生日を迎える方は、その年(2026年)の12月末時点で19歳以上となるため、「150万円未満」が収入基準となります。
逆に、2030年10月に23歳となる場合、その年末時点で23歳以上となるため、2030年1月からは再び「130万円未満」の基準に戻る点に注意が必要です。同じ年度に生まれた方であっても、その年の12月末まで22歳なら「150万円未満」、そうではない場合は「130万円未満」になることが想定されます。なお、12月末時点でにおいて19歳以上23歳未満であれば、学生ではない方も制度の対象となることとされています。
対応に向けた準備を|中小企業が今からできること

今回の制度変更にともない、家族構成に該当者がいる従業員からの相談や扶養申請の実務対応が考えられます。手続きで混乱を生じさせないためにも、以下の点について早めの確認・対応をおすすめします。
- 該当年齢の扶養予定者がいる従業員の有無
- 対象者の収入見込みと年末時点の年齢
- 社員への周知と相談対応の体制整備
- 今後発表される通達・Q&Aの詳細の確認
まとめ
2025年10月から社会保険の被扶養者の収入要件としての「130万円の壁」が一部緩和され、若年層の収入基準が変わります。「年収が150万円未満であれば被扶養者にできる」と一律で考えるのは早計で、年末時点の年齢や収入見込みなどによって扶養認定の可否が変わるため、改正の詳細を確認したうえで対応することが大切です。今後、厚生労働省のホームページ等で、より詳細な運用方法やQ&Aが公表される予定です。最新情報をフォローしつつ、本記事の内容も参考に、従業員からの扶養に関する相談対応や実務運用にお役立ていただければ幸いです。
