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【2025年4月開始】出生後休業支援給付|雇用保険の新たな給付制度

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【2025年4月開始】出生後休業支援給付|雇用保険の新たな給付制度

1.はじめに

2025年4月、改正育児・介護休業法の施行に伴い、男女ともに育児と仕事を両立しやすい環境を整えるための新たな支援制度がスタートします。同時に、育児中の労働者を対象とした雇用保険の新しい給付制度【育児時短就業給付】および【出生後休業支援給付】も開始されます。前回の記事では、【育児時短就業給付】について解説しましたが、今回は【出生後休業支援給付】について詳しくご紹介します。

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2.雇用保険の給付制度について

労働者が育児のために休業する期間については、ノーワークノーペイの原則により事業主に賃金を支払う義務がありません。労働者が、仕事を育児休業や出生時育児休業(産後パパ育休)を取得して仕事を休むと、対応する期間については無給扱いとなり、生活への影響が生じるのを補填する形で、ハローワークから育児休業給付金(産後パパ休業の場合、出生時育児休業給付金)が支給されます。給付金が支給されるのは、雇用保険に加入している労働者であり、一定の勤務実績があること等の詳細な要件が定められています。

厚生労働省が行った令和5年度の統計によると、男性の育児休業取得率は30.1%であり、女性の84.1%に比べて低いことがわかっています。また、女性は9割以上が6か月以上の育児休業を取得している一方で、男性はおよそ4割が2週間未満であることも明らかになりました。考えられる背景としては、賃金が高い傾向にある男性労働者がメインで働いている等の事情が窺われます。そこで、今後は、労働者が男女ともに育児と仕事を両立して働きやすくするための国からの支援制度として、2025年4月から【出生後休業支援給付金】が始まります。

厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について」より

2.出生後休業支援給付とは

出生後休業支援給付金では、子の出生直後の一定期間以内に、夫婦が共に14日以上の育児休業を取得する場合、28日間分を上限として、夫婦に休業開始前賃金の13%相当額が支給されます。

出生後休業支援給付金は、次の要件を満たす雇用保険被保険者が対象です(雇用保険法第61条の10)。

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 休業を開始した日前2年間に、みなし被保険者期間(※1)が通算して12か月以上あること
  • 被保険者が対象期間内(※2)に通算して14日以上の休業をしたこと

※1 出生後育休を開始した日を被保険者でなくなった日とみなしてカウントする被保険者期間。賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1ヵ月として数えます。

※2 産後休業をしていない場合(主に父親)は子の出生後8週間以内。産後休業をした場合(主に母親)は原則として産後休業後8週間以内。出産した女性は、労働基準法に基づき原則産後8週間の産後休業を取得しますので、この場合の対象期間は産後休業終了後の期間となります。

なお、男女ともに育児と仕事を両立することができるようにする狙いから、雇用保険の被保険者である夫婦が共に一定期間の休業をしていることが要件になっていますが、例外として次のような場合は、夫婦の休業取得の有無を問わずに支給されます(雇用保険法施行規則第101条)。

  • 配偶者が専業主婦(夫)の場合
  • ひとり親家庭の場合
  • 配偶者が自営業やフリーランスの場合などで雇用保険の被保険者ではない場合

3.出生後休業支援給付金の額

出生後休業支援給付金の支給額は、休業開始時賃金の13%相当額です(雇用保険法第61条の10)。通常の育児休業給付(出生時育児休業給付金)の休業開始から6か月までは休業開始時賃金の67%が支給されるのと合わせて、休業前賃金の80%が支給される仕組みになっています。

出生後休業支援給付の支給額

休業開始時賃金日額( 休業前6か月間の賃金÷180 ) × 休業日数( 上限28日 ) × 13%

出生後休業支援給付は、休業する前に企業から支給されていた賃金の総支給から社会保険料等を控除した手取り額(およぼ総支給額の8割)と同等の金銭を得られるように設計されており、休業中の手取り額の減少をカバーする育児と仕事の両立支援制度の役割を担うことが期待されます。ただし、出生後休業支援給付金の支給対象となる日数の上限は28日とされており、休業を分割して取得する場合は、通算して28日間までが給付の対象となります(雇用保険法第61条の10第6項)。

なお、休業開始時賃金日額には別途上限・下限額が設けられています。2025年7月31日までの上限額は15,690円、下限額は2,869円です。

4.おわりに

出生後休業支援給付は、2025年4月からスタートする雇用保険の新しい給付制度です。金銭的な不安を減らし、従業員がライフステージに応じて働きやすい環境を選択できるよう支援するもので、企業にとっても従業員の安心や定着を促進する良い機会となります。

一方で、企業がこの制度をうまく活用するためには、業務・役割の配分や勤務評価の透明性を維持し、従業員が長く活躍できる職場環境を整えることが重要です。当事務所では、組織診断を通じて課題を可視化し、制度整備のサポートや職場環境の改善をお手伝いしています。働き方の工夫や制度導入にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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