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【報酬月額変更届・算定基礎届】社会保険の間違いやすいポイントを解説(1)

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【報酬月額変更届・算定基礎届】社会保険の間違いやすいポイントを解説(1)

はじめに

社会保険手続きは、多くの企業にとって避けて通れない重要な業務の一つです。従業員の給与や、雇用条件に変更されるときに、間違いが生じやすいポイントが多々あります。今回の記事では、特に注意が必要なケースと、それぞれの正しい対処方法をご紹介します。

「算定基礎届」と「報酬月額変更届」

企業が行う社会保険には「算定基礎届」「報酬月額変更届」というものがあります。3ヶ月分の給与支払額と基礎日数によって、1ヶ月分の平均額を算出して年金事務所へ届け出る手続きですが、その意味や行うべき時期が異なります。

協会けんぽ管掌の健康保険や、厚生年金保険料は、被保険者の給与水準(標準報酬月額)によって労使の負担額が定められています。企業で、昇給や降給、従業員の働き方の変更などにより、賃金が変更されると実際の賃金額と標準報酬月額との間に差が生じることになります。この差をなくすために、企業には、年に1回標準報酬月額を決定するための届出が義務付けられており、これを算定基礎届といいます。

この手続きは、毎年7月1日現在で在籍しているすべての被保険者に対して当年4~6月に支払った賃金を、例年7月1日~7月10日の期間に届け出ることが必要です。この算定基礎届によって、毎年9月から翌年8月までの各月の標準報酬月額と労使が負担する保険料が定められます。

上記「算定基礎届」により、年に1回、実際の賃金額と標準報酬月額の確認が行われますが、4月~6月以外の時期に被保険者の報酬が大幅に変わったときは、算定基礎届の時期を待たずに標準報酬月額を改定します。このために行う手続きを「報酬月額変更届」といいます。

報酬月額変更届は、下記の要件をすべて満たすときに提出しなければなりません。

  • 昇給または降給などにより固定的賃金に変動があった
  • 変動月からの3カ月間に支給された報酬の平均額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じている
  • 3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上ある

上記1から3の要件をすべて満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4カ月目(例:4月に支払われる給与に変動があった場合、7月)の標準報酬月額から改定されます。

間違いやすいポイント ① 給与計算の基礎日数

日本年金機構:報酬月額変更届より

「報酬月額変更届」や「報酬月額算定基礎届」には、「給与計算の基礎日数」を記載する欄があります。この欄には、報酬(給与)支払の基礎となった日数(給与支払の対象となる日数)を記載しますが、賃金の形態によりカウント方法が異なります。

  • 時給制・日給制の場合:実際の出勤日数(有給休暇も含む)を基礎日数としてカウントする
  • 完全月給制・週給制の場合:出勤日数に関係なく暦日数を基礎日数としてカウントする(※1)


※1:日給月給制のように、欠勤日数分だけ給料が控除される場合は、就業規則等で定めた労働日数から、欠勤日数を控除した日数となります。例えば、4月の所定労働日数が21日の企業で、6日欠勤し、欠勤による不就労時間分の賃金を控除して給与を支払う場合の支払基礎日数は、21日-6日=15日となります。

夜勤労働者で、日付をまたいだ勤務がある場合、上記1の基礎日数のカウント方法とは異なります。

  • 夜勤労働者が月給制の場合:各月の暦日数を支払基礎日数とします。
  • 夜勤労働者が日給制の場合:出勤回数を支払基礎日数とし、変形労働時間制の場合は下記の時給制の計算に準じます。
  • 時給制の場合:各月の総労働時間を所定労働時間で割った日数を支払基礎日数とします。

仮眠時間等を労働時間に含むか否かは、就業規則や就業の実態などに基づいて、賃金支払いの対象となっているかどうかによって判断します。

間違いやすいポイント ② 報酬月額

「報酬月額変更届」や「報酬月額算定基礎届」には、「報酬月額」を記載する欄があります。この欄には、3ヶ月間の報酬額を記載し、「平均額」の欄に各月の平均額を記載しますが、イレギュラーなケースが生じている場合には特に注意が必要です。

日本年金機構:報酬月額変更届より

給与締め日が変更された場合、締日変更直後の月の給与支払の基礎日数の増減が生じることとなります。基礎日数の増減が生じるのに伴い、当月の賃金額が増減することとなりますが、この場合の取り扱いは、以下の通りとなります。

上の図のように給与締日が15日から20日に変更された場合、締日を変更した月(4月)のみ給与計算期間が前月16日~当月20日となります。この場合は、前月16日~前月20日(3/16~3/20)の給与を除外し、締日変更後の給与制度で計算すべき期間 (前月21日~当月20日)で計算した報酬をその月の報酬として届書に記載します。

基礎日数が17日以上(※2)あるか否かにより取扱いが異なります。

  • 基礎日数が17日以上の場合:通常の方法(3ヶ月間の基礎日数と支払われた賃金額を記入)し、平均額を算出する
  • 基礎日数が17日未満の場合:給与締め日の変更によって支払基礎日数が17日未満となる場合は、その月を除外して平均を算出します。

※2:一般の被保険者の場合は17日以上、短時間労働者であれば11日以上。正社員の4分の3以上を勤務する従業員(4分の3基準を満たす被保険者)は、支払基礎日数がを満たす月がない場合、支払基礎日数が15日以上。

昇給や降給が遡って発生した場合、その変動が反映された月(差額調整が行われた月)を起算月とし、続く3か月間の報酬を基に随時改定を行います。降給の場合も、昇給と同様の取り扱いがされ、超過支給分の報酬が差額調整された場合は、差額調整前の報酬額を基に改定が行われます。

ここでの差額調整とは、あくまで遡って昇給・降給することが決まった場合であり、手当支給や昇給漏れのような給与計算の誤りや、本人からの家族手当の申請遅れなどにより、さかのぼって不足した手当額を支給したときには、差額を支給した月ではなく本来支給すべき月の給与として算入することになっています。つまり、本来支給すべきであった月が変動月となり、以降の3ヶ月間の報酬を基に随時改定を行うことが必要です。

おわりに

社会保険手続きにおける正確な知識と注意が求められるポイントは数多く存在します。今回の記事では、標準報酬月額や労使が負担する社会保険料を正しく算定するために必要な、給与支払の基礎日数の考え方や、毎月従業員に支払う給与にレアなケースが生じたときの対応法について解説いたしました。ご不明点や具体的なケースでのご相談がある場合は、当事務所までお気軽にお問合せ下さい。

  • この記事を書いた人
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エスマイル社会保険労務士事務所 社会保険労務士 三浦 敬子

福岡・北九州を拠点に社会保険労務士として、労使双方が共に満足できる職場づくりをサポートしています。企業が理想とする職場を実現するために、新しい時代に対応する支援メニューを提供いたします。

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