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高年齢雇用継続給付の支給率改定|企業が知っておくべきポイント

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高年齢雇用継続給付の支給率改定|企業が知っておくべきポイント

はじめに

企業には、高年齢者雇用安定法に定める、従業員が希望する場合は原則65歳まで雇用を継続する義務があります。定年年齢を65歳未満と定めている企業では、「高年齢者雇用確保措置」として、次の3つの措置からいずれかを実施する必要があります(高年齢者雇用安定法第9条)。

高年齢者雇用確保措置働調査)

  • 65歳まで定年年齢を引き上げ(26.9%)
  • 希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度を導入(69.2%)
  • 定年制の廃止(3.9%) 

※( )は、高年齢者雇用確保措置として企業が採用した割合。厚生労働省:令和5年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果より。

60代前半の継続雇用者の雇用形態では、「嘱託・契約社員」が全体の57.9%と最も多く(※1)、定年前よりも出勤日数や就業時間数を減らして働く方も多いことがわかります。
この場合、企業が短縮された労働時間分の賃金を維持して雇用を継続することは一般的には難しく(ノーワークノーペイ)、この対応として活用可能な雇用保険制度として高年齢者雇用継続給付があります。

※1:独立行政法人労働政策研究・研修機構:高年齢者の雇用に関する調査(企業調査)2020年3月発表より

高年齢雇用継続給付金とは?

高年齢雇用継続給付は、60 歳から 65 歳までの雇用継続を援助・促進することを目的に創設された制度です。高年齢雇用継続給付には、【高年齢雇用継続基本給付金】と【高年齢再就職給付金】の2種類の給付金があります。


【高年齢雇用継続基本給付金】は60歳以降も同じ会社で働いている人が受け取れる給付金であり、【高年齢再就職給付金】は60歳以降に退職して新しく別の職場に再就職した人が受け取れる給付金です。

いずれも、60 歳以上 65 歳未満の雇用保険に入っている労働者が60歳時点に比べて賃金が 75%未満に低下した場合にハローワークへの支給申請により給付金が支給される可能性があるものです。

高年齢者雇用継続給付の種類

  • 高年齢雇用継続基本給付金 ➡ 60歳以降も同じ会社で働いている人が受け取れる給付金
  • 高年齢再就職給付金 ➡ 60歳以降に退職して新しく別の職場に再就職した人が受け取れる給付金

高年齢雇用継続基本給付金は次の事項をすべて満たす方に支給されます。支給される期間は、60歳到達月から65歳到達月までです。

  • 60歳到達後も同じ企業に継続して雇用されている方
  • 雇用保険の被保険者である方
  • 被保険者であった期間が通算して5年以上ある方
  • 60歳以後の各月の賃金が原則として60歳時点と比較して75%未満である方
  • 同じ時期に育児休業給付、介護休業給付の支給対象となっていない方
  • 各歴月の初日から末日まで雇用保険の被保険者として雇用されている方
厚生労働省「高年齢者雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」より

支給額は、60歳到達月以降の各月に支給された賃金×支給率の計算により求められた金額となります。支給率は、各月に支給された賃金の低下率により上限が定められており、この支給率が改正雇用保険法により、2025年4月から支給率の上限が15%から10%に変更になることが決まっています。支給率上限10%が適用されるのは、2025年4月1日以降に60歳に達した日(※)を迎えた方です。

参考リンク|厚生労働省:令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します

なお、高年齢雇用継続給付には支給限度額(※2)が設けられており、支給対象月に支払いを受けた賃金の額が支給限度額以上であるときには、高年齢雇用継続給付は支給されません。支給対象月に支払いを受けた賃金額と高年齢雇用継続給付として算定された額の合計が支給限度額を超えるときは、支給限度額-(支給対象月に支払われた賃金額)が支給額となります。
また、最低限度額(※2)も設けられており、高年齢雇用継続給付として計算された額が2最低限度額を超えない場合は、支給されません。

※2:毎月勤労統計の平均定期給与額の増減をもとに、毎年8月1日から支給限度額・最低限度額が変更されます。2024年8月1日からの1年間の額は支給限度額376,750円、最低限度額2,295円。

高年齢者雇用継続基本金の支給申請は、事業所の管轄のハローワーク宛に行います。申請は、2ヶ月に一度行うもので、申請期限が設けられています。初回の申請は、最初の支給対象月の初日から起算して4か月以内、2回目以降は初回申請後にハローワークから通知される申請月の指定日となります。
初回の申請では、高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書とともに、雇用保険被保険者60歳到達時等賃金証明書を提出して過去の賃金支払い実績を届出る必要があります。

おわりに

2025年4月1日以降に60歳に達する雇用保険被保険者の方は、支給率の改正が適用されますので、企業の皆様にとっては、事前の説明や、定年再雇用時の賃金設定や働き方の見直しなど、改正をふまえた対応が重要となります。
雇用保険の給付は、受給資格や支給要件が細かく定められていますので、従業員から相談や申し出があったとき、スムーズに対応できるよう内容をよく把握しておくことをおすすめします。保険手続や従業員の働き方に関するサポートが必要な企業様は、お気軽にお問合せ下さい。

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