はじめに
毎年行う労働保険料の年度更新は、手続き自体には慣れていても、対象者や賃金の集計で思わぬ誤りが生じやすい手続きです。
厚生労働省でも、申告額や納付額に過不足が生じる主な原因として、雇用保険の加入要件を満たす短時間労働者の加入漏れ、賃金の一部の算入漏れ、労働保険の対象とならない労働者の賃金の誤算入などを挙げ、注意を呼びかけています。
年度更新で集計を誤ると、保険料の過不足が生じるだけでなく、後から修正や説明が必要になることもあります。
特に見落としやすいのが、次の3つです。
- 短時間労働者の雇用保険加入漏れ
- 賃金の算入漏れ
- 対象者・対象外の入れ間違い
短時間労働者の雇用保険加入漏れ
年度更新では、労働保険の対象となる賃金額や人数だけでなく、雇用保険の対象者についてもあらためて確認する必要があります。
このとき、シフト制で勤務している人や、もともとの雇用契約より労働時間が増えている人について、雇用保険の加入手続きが漏れたままになっていると、年度更新でも雇用保険対象者の賃金や人数を正しく集計できない原因になりやすくなります。
雇用保険では、原則として「1週間の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」場合に被保険者となります。
パートやアルバイトであっても、名称にかかわらず要件を満たせば加入が必要です。
年度更新の時期に賃金台帳の数字だけを追って済ませるのではなく、「契約内容」「シフトの実態」「雇用保険資格取得届の提出状況」まであわせて確認しておきたいところです。
賃金の算入漏れ
年度更新では、基本給だけでなく、各種手当や賞与など、労働の対償として支払うものを広く確認する必要があります。
よく見かけるのが、家族手当・通勤手当・住宅手当・残業代などを含めずに計算しているケースです。
労働保険料の算定基礎となる賃金には、基本給のほか、賞与、通勤手当、住宅手当、時間外手当なども含まれます。通勤手当については、非課税部分であっても対象です。 毎月の給与計算で、割増賃金の計算基礎に含まれない手当であっても、労働保険料の対象賃金となるものがあります。
そのため、年度更新の集計段階では、
- 基本給だけを見ていないか
- 毎月支給ではない項目を落としていないか
- 賞与や一時金を見落としていないか
を改めて確認しておきたいところです。
対象者・対象外の入れ間違い
労働保険の対象とならない人の賃金を含めていたり、逆に対象となる労働者の賃金を集計から外してしまうと、申告額にズレが生じます。
年度更新は、単に賃金総額を集計するだけでなく、「誰の分を含めるのか」 を確認する作業でもあります。
たとえば、
- 短期間のアルバイト
- 有期雇用者
- 年度途中で退職した労働者
などの扱いで、算入漏れや誤算入が起こることがあります。労働保険料の対象賃金には、年度途中の退職者に支払った賃金も含まれます。
また、役員や同居の親族など、労働保険の対象とならない人を誤って含めてしまうケースも見られます。取締役は原則として対象外であり、同居の親族も原則として労働者に当たりませんが、実態によって扱いが分かれることもあります。 毎年同じ処理をしている場合でも、雇用形態や勤務実態が変わっていないか、この機会に見直しておくことが大切です。
おわりに|令和8年度 労働保険年度更新の提出期限
年度更新は、単なる集計作業ではなく、「誰を対象に、どの賃金を含めるか」 を見直す機会でもあります。
書類の作成そのものに気を取られがちですが、実務上は、「雇用保険の適用確認」「賃金項目の整理」「対象者区分の確認」こそが重要です。毎年なんとなく処理している場合ほど、一度立ち止まって確認してみることをおすすめします。
なお、令和8年度の労働保険料年度更新の申告・納付期間は、6月1日(月)から7月10日(金)までです。7月には社会保険の算定基礎届の提出もありますので、まずは年度更新のルールと、自社の集計方法を整理しておくと安心です。
年度更新の時期は、日々の給与計算や雇用保険の適用状況を見直す機会にもなります。
給与計算や労務手続きとあわせて整理したい場合は、労務顧問ページ や 給与計算代行ページ もあわせてご覧ください。