厚生労働省の「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」から、令和5年1月から9回にわたり行われた研究会報告書が発表されました。厚労省は、研究会報告書を検討し、来年の通常国会に育児介護休業法の法案提出を行う見込みです。法案が可決すれば今後さらなる育児と仕事の両立支援が拡充されます。
今後の両立支援制度の見通し
令和5年6月時点の育児介護休業法においても既に育児と仕事の両立支援のための勤務制度は定められていますが、今後の法改正等によって、子どもが小学校に入学するまでの間についても短時間勤務制度を利用できるようになるなどの働き方が整備されることが検討されています。
検討されている内容な次のとおりです。
子が3歳になるまでの両立支援
- テレワーク勤務を可能とすること(努力義務)
- 1日6時間勤務を可能とする時短勤務の他にも、勤務制度を設けること
子が3歳以降小学校に入学するまでの両立支援
令和5年6月時点の育児介護休業法で規定されている時短勤務の対象者は、企業の制度に規定がある場合を除き、3歳になる前の子がいる労働者ですが、小学校入学前の子を持つ労働者も対象者とするなどの柔軟な働き方ができる法整備が厚労省で検討されています。
研究会報告書のとおりに法案が可決された場合、企業は、3歳から小学校に入学する前の子がいる労働者を対象とする柔軟な勤務制度を複数整備することが求められるようになります。柔軟な勤務制度として、短時間勤務制度、テレワーク、始業時刻の変更等(フレックスタイム制・時差出勤・保育施設の設置運営その他)、新たな休暇の付与が挙げられています。
また、性別にかかわらず子育てに参加できる環境づくりの整備として、企業は、3歳以降小学校入学前までの子をもつ労働者についても、3歳未満の子をもつ労働者と同様に、時間外労働の免除の申出があれば時間外労働を免除する(義務)ことが必要とされています。
まとめ
育児介護休業法は、2022年にも法改正が行われ育児休業の分割取得が可能になるなど、夫婦で育児参加がしやすい環境づくりのための法整備が進んでいます。育児介護休業法の改正にともなって、厚生年金(養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置)にも変更が行われる可能性も考えられますので法改正前に企業の人事労務担当の方は確認しておきましょう。
前出の研究会では「ライフステージにかかわらず全ての労働者が残業のない働き方となることを基本的な考え方として育児期の両立支援を検討し継続的に取り組んでいく」とのことです。また、法案が可決されると、育児介護休業法の対象者以外の労働者からのテレワークやフレックスタイム制度などの様々な働き方のニーズが高まることが考えられます。柔軟な働き方により働きやすい環境をつくり、かつ良質な仕事が行われるためには、職場にタスク志向の働き方が浸透するよう労使でコミュニケーションを図ることも重要です。