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2025年4月施行|育児・介護休業法改正で事業主に求められる新たな義務

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2025年4月施行|育児・介護休業法改正で事業主に求められる新たな義務

はじめに

総務省が発表している「令和4年就業構造基本調査」によると、過去1年間で「介護・看護のため」に離職した労働者は約10.6万人に上ることがわかっています。このような背景を受けて、2025年4月1日から改正育児・介護休業法(以下、「改正法」)が施行され、労働者が介護と仕事を両立しやすい環境を整えることが事業主の義務となります。
本記事では、改正法で新たに定められた事項と、仕事と介護を両立させるために事業主が取り組むべき内容について解説します。

改正の概要

2025年4月1日から、以下の事項が事業主に求められる義務として追加されます。仕事と介護の両立のために利用できる制度の理解を広め、それを利用しやすい職場環境を整えることが事業主の義務となります。

改正法により2025.4.1から追加される事業主の義務

  1. 介護休暇を利用できる対象労働者の要件緩和(義務)
  2. 介護に直面した労働者に対して介護両立支援制度等を個別周知・意向確認(義務)
  3. 介護に直面する前の早い段階での介護両立支援制度等の情報提供(義務)
  4. 介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境整備(義務)
  5. 介護が必要な対象家族がいる場合のテレワーク勤務(努力義務)

Q.「介護」とは?

労働者から介護両立支援制度の利用希望があった場合、事業主はその利用を認めることとなります。この「介護」とは、以下に該当する対象家族の介護や世話を指します。

  • 要介護状態 : 2週間以上、常時介護を必要とする状態(負傷、疾病、身体上・精神上の障害)
  • 対象家族 : 配偶者(事実婚を含む)、父母、子(養子を含む)、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫

法改正1|介護休暇を利用できる対象労働者の要件緩和

介護休暇は、対象家族の介護や世話のために取得できる休暇です。

  • 対象家族1人の場合:年間5日間まで取得可能
  • 対象家族2人以上の場合:年間10日間まで取得可能

この休暇は年次有給休暇とは別に付与され、1日単位だけでなく、始業時刻から連続した時間単位や終業時刻までの連続した時間単位でも取得可能です。介護休暇を取得した日・時間の賃金の支払い(有給・無給)は、事業主の裁量となります。

従来の法制度では、労使協定が締結されている場合、「入社6か月未満の労働者」や「週所定労働日数が2日以下の労働者」を介護休暇の対象外とすることも認められていました。しかし、改正法により2025年4月1日からは「入社6か月未満の労働者」も介護休暇を取得できるようになり、労使協定によって対象外とすることができなくなります。法改正前の労使協定で、入社6ヶ月未満の労働者を対象外としている事業所は、見直しが必要です。

法改正2|介護両立支援制度等の個別周知・意向確認(義務)

改正法により、労働者から対象家族の介護が必要になったことの申し出を受けた場合は、事業主は、介護休業制度などの詳しい内容について面談・書面交付・FAX・メールのいずれかで個別に知らせて制度の利用を希望するかを聴取することが義務となります(FAX・メールによる周知は、労働者本人の希望がある場合)。

事業主が労働者に伝えるべき事項は次のとおりです。

介護両立支援制度等の個別周知事項

  1. 介護休業に関する制度
  2. 介護両立支援制度等
  3. 介護休業・介護両立支援制度等の申出先
  4. 雇用保険から給付される介護休業給付金に関すること

上記②の介護両立支援制度等とは、育児・介護休業法に定められている次の制度のことをいいます。

  • 介護休暇
  • 所定外労働の制限
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限
  • 介護のための所定労働時間の短縮などの措置

法改正3|介護両立支援制度等の早期情報提供(義務)

介護離職の背景には、介護に関する制度が労働者に十分に知られていないことも挙げられており、これを踏まえた改正法では、労働者が介護に直面する前の段階で、介護に関する制度の理解を広めるための取り組みを行うことを事業主に義務づけています。

具体的には、「法改正2|介護両立支援制度等の個別周知・意向確認(義務)」で、事業主が労働者に伝えるべき介護両立支援制度等の個別周知事項と同じ内容を、面談・書面交付・FAX・メールのいずれかで情報提供することが必要となります。

なお、この取り組みを行う「介護に直面する前の早い段階」とは、次の時期とされています。

①40歳の誕生日前日の属する年度(1年間)  または  ②40歳の誕生日からの1年間

法改正4|雇用環境整備(義務)

介護離職を防ぐための措置として、改正法では、事業主に仕事と介護を両立しやすい雇用環境を整備することを義務づけています。具体的には、労働者が、制度の利用希望を出しやすくするための取り組みとして、次のいずれかを行うことが義務となります。

  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  • 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口の設置など)
  • 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用事例の収集・提供
  • 介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

法改正5|介護が必要な場合のテレワーク勤務(努力義務)

対象家族の介護が必要な労働者が、仕事と介護を両立しやすくするために、テレワーク勤務を可能とすることが望ましいとされており、改正法では労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが事業主の努力義務となります。

おわりに

2025年4月1日からの改正法では、さらなる育児・介護と仕事の両立へ向けて、制度を利用できる労働者の要件緩和や、育児や介護を理由とする離職を防ぐための事業主の義務が強化されます。自社で採用する取組みの選定や、就業規則・労使協定書の見直しに加え、従業員へ説明する際に用いる説明資料を十分に準備しておくことが、法改正後のスムーズな人事労務対応のポイントといえます。
改正法への対応についてのご相談やサポートをご希望の方は、ぜひ当事務所にお問い合わせください。

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