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常時介護を要する状態の判断基準見直し|育児介護休業法

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常時介護を要する状態の判断基準見直し|育児介護休業法

家族介護が生じた場合の【介護両立支援制度】

少子高齢化が進む中、家族の介護と仕事の両立が企業と労働者双方にとって重要な課題となっています。育児介護休業法は、その名の通り育児と介護の両立を支援する法律ですが、これまで育児に関するルール改正が多かったことから、「育児を中心とした法律」という印象を持たれる方も多いかもしれません。

しかし、厚生労働省の調査によると、全国で年間約10万人もの労働者が介護離職が生じるなど、介護離職は年々深刻化しており、介護と仕事を両立できる環境を整備することが求められています。このような状況を踏まえ、介護と仕事を両立するための環境整備は、事業主が労働力を確保し、安定した事業運営を続けるためにも欠かせない課題といえます。

現在、育児介護休業法に基づき、家族介護を支援するために以下のような制度が設けられています。

制度概要
介護休業要介護状態の家族1人につき、通算93日まで休業可能。
介護休暇対象家族1人につき1年度に5日までの休暇付与(2人以上の場合は10日)
所定労働時間短縮等所定労働時間の短縮、フレックスタイム制度、時差出勤、介護サービス費用助成などその他これに準ずる措置のうち1つ以上
所定外労働の免除所定労働時間を超える労働の免除
時間外労働の制限法定時間外労働の制限(1か月24時間、1年150時間まで)が可能
深夜業の免除22時から翌朝5時までの間の労働免除

これらの制度は、労働者の負担軽減とキャリア継続を支援するために設けられており、制度を利用できる労働者は「要介護状態にある対象家族」の介護や世話を行う者とされています。

対象家族とは、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。

常時介護を要する状態とは

「常時介護を要する」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態(育児介護休業法第2条第3号、施行規則第2条)とされています。

具体的には、①「介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上」であること、または②「所定の状態に該当し、その状態が継続する」と認められることとされています。②に該当するかどうかは、厚生労働省の研究会により発表されている「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」(以下、「判断基準」)に記載された日常生活を送るうえでの動作等を自力でどこまでできるかによります。常時介護を要する状態に関する判断には、日常生活において支援が必要な状態や、疾病や障害・加齢により身体または精神の機能が低下している状態について詳しく記載されています。

常時介護を要する状態”に関する判断基準の見直し

育児・介護休業法に基づく介護休業などの介護両立支援制度は、障害がある子等を持つ労働者も利用可能であるものの、判断基準は、主に高齢者介護を念頭に作成されており、子に障害のある場合や医療的ケアを必要とする場合に、「育児介護休業法に規定がある要介護状態に該当するかどうかや、介護両立支援制度を利用できるかどうか」の解釈が難しいとの声があがっています。そこと、厚生労働省は、現行の判断基準の見直しを検討しています。

現時点では、投稿日現在の判断基準から3つの項目で文言の見直しが検討されています(下線が見直し部分)。

  • (現行)外出すると戻れない ➡ (見直し案)外出すると戻れないことや、危険回避ができないことがある。
  • (現行)周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れ
     ➡(見直し案)周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れなど日常生活に支障を来すほどの認知・行動上の課題がある。
  • (現行)薬の内服 ➡ (見直し案)医薬品又は医療機器の使用・管理。

改正育児介護休業法で義務化される【介護両立支援制度を利用しやすい雇用環境】の整理

障害のある子どものうち、医療的なケアが日常的に必要な「医療的ケア児」は、全国で2万人以上いるとされています。厚生労働省では、高齢者のみならず、障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合であっても、判断基準に該当すれば介護両立支援制度等を利用できることを広く周知すべきとし、改正育児・介護休業法の施行日である令和7年4月をめどに新しい判断基準の運用開始を目指しています。

令和7年4月1日施行の改正育児介護休業法では、労働者の仕事と家族介護の両立のため、「介護に直面した労働者に対する個別周知・意向確認」、「介護両立支援制度などの早期情報提供」、「介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境の整備」を事業主の義務としています。

過去記事|2025年4月施行 育児・介護休業法改正で事業主に求められる新たな義務

おわりに

少子高齢化の進展や、法令の改正に合わせて、事業主にはより一層の雇用環境の整備が求められます。施行日が令和7年4月1日および10月1日に迫る改正育児介護休業法では、育児と介護ともに、仕事と育児・介護を両立して働くことができる職場環境の整備を事業主の義務としており、厚生労働省が示す取り組みのなかから自社のニーズ等に適したものを導入することを求めています。改正の詳しいルールを把握し、自社にとって最適な制度を整備し措置を講ずることが必要です。

当事務所では、改正育児介護休業法に基づく制度整備や、職場環境の改善に関するサポートを行っています。介護両立支援制度の導入や改正内容についてお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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