人事労務管理

障害者雇用状況報告書の作成と留意事項

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障害者雇用状況報告書の作成と留意事項

常用労働者が43.5人以上いる企業は、毎年6月1日現在の雇用状況を記載した「障害者雇用状況報告書」をハローワークに届出なければなりません(令和5年現在)。今回の記事では、障害者雇用状況報告書の概要と記入にあたってのご留意事項についてお知らせします。

 障がい者雇用に関する法令のルール

令和5年現在、民間企業には障害者雇用促進法により常用労働者(※)の総数に対して、2.3%以上の障がい者を雇用することが義務付けられています。

【常用労働者とは】
1週間の所定労働時間が20時間以上である次のいずれかに該当する労働者のことです。

  • 雇用期間の定めのない労働者
  • 1年を超えて雇用されている労働者(1年以下であっても更新の可能性がある場合を含む)
  • 日々雇用され、1年を超えて雇用契約が日々更新されている労働者( 〃 

この法令によって民間企業が雇用するべき障がい者の人数は、下記の算式で求めます。

常用労働者数 × 法定雇用率(2.3%)

この計算の結果、常用労働者数が43.5人以上であれば障がい者の雇用義務があることがわかります。事業主が、障がい者雇用義務を果たすことができた場合には、独立行政法人高齢・障害求職者支援機構から金銭給付があります。逆に、常用労働者数が100名を超える事業主が、障がい者雇用義務を果たせなかった場合は、障害者雇用納付金を収めることになります。

出典:独立行政法人高齢・障害求職者支援機構:障害者雇用納付金制度による障害者の雇用の促進と職業の安定を図るために

 障害者雇用状況報告書とは

  • 提出しなければならない事業主とは?

常用労働者43.5人以上の事業主に提出を義務づけられています。毎年6月1日現在の雇用状況を、7月15日までにハローワーク経由で厚生労働省に提出します。

  • 何に活用される?

企業から提出された障害者雇用状況報告書は、国が障害者の雇用状況および雇用率の達成状況を把握したり、行政から助言・指導・調査等を行うための基本情報として使用されます。また、障害者雇用状況報告の記載事項は、障害者雇用納付金関係業務を行っている独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に提供されます。

  • 提出しないとどうなる?

この報告をしない場合又は虚偽の報告をした場合は、障害者雇用促進法第86条第1号の定めにより、罰則(30万円以下の罰金)の対象となります。

 障害者雇用状況報告書が届いたらやること

step
1
必要な情報を収集する


障害者雇用状況報告書の記載事項には、企業が雇用している障がい者の数や勤務状況に関する情報が含まれます。まず、6月1日時点の障がい者数、障がいの種別、雇用形態などの情報を収集します。支店や営業所など本社以外の事業所がある場合は、事業所ごとに情報を集めます。

<収集する情報>
1.常用雇用される従業員数(週所定30時間超)、短時間勤務の従業員数(週所定20時間~30時間未満)

2.障がいに応じた従業員数
  障害の種類(身体・知的・精神)、雇用形態(短時間労働者・それ以外)、障害の程度(重度障害者・それ以外)ごとに集計

step
法的な要件を確認する


収集した情報をもとに、障害者の雇用状況を分析します。STEP1で収集した常用労働者数と障害者数を用いて、自社の障がい者雇用率(実雇用率)を計算します。



実雇用率が、法定雇用率(民間企業は2.3%)を満たしているか確認をします。実雇用率が、法定雇用率を下回っているときは、障害者雇用納付金の納付義務が生じる(常用労働者数100名超の企業の場合)こともふまえて、今後の障がい者雇用について検討します。

step
提出


収集した情報と分析結果をもとに、障害者雇用状況報告書を作成します。記入が必要な箇所に漏れがないかや数値等を正確に記入します。記入が終わったら、例年管轄のハローワークの窓口に電子申請、郵送、直接持参のいずれかの方法で提出します。例年の提出期限は7月15日ですが、令和5年度は土日祝日の関係で令和5年7月18日(火)が提出期限となります。

 情報収集とプライバシー

障害者雇用状況報告書の作成・提出や、障害者雇用納付金制度の適用有無を確認する際には、障がいをお持ちの労働者の人数、障害の種別、障害の程度などを確認する必要ですが、これらの情報は、労働者の個人情報保護法をはじめとする法令等に十分留意しながら、適正に取り扱うことが必要です。

厚生労働省では、企業が労働者から障がいに関する情報を収集する場合に、障害者本人の意に反した制度の適用等が行われないよう「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」を定めています。

  • 採用段階で障害者を把握・確認する場合

採用決定前から障害者であることを把握している方を採用した場合は、採用決定後に、その労働者に対して障害者雇用状況の報告等のために用いるという利用目的等の事項(※)を明示した上で、本人の同意を得て、その利用目的のために必要な情報を取得します。

< 利用目的等の事項 >

(1) 利用目的(障害者雇用状況の報告、障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金又は報奨金の申請のために用いること)
(2)(1)の報告等に必要な個人情報の内容
(3)取得した個人情報は、原則として毎年度利用するものであること
(4)利用目的の達成に必要な範囲内で、障害等級の変更や精神障害者保健福祉手帳の有効期限等について確認を行う場合があること
(5)障害者手帳を返却した場合や、障害等級の変更があった場合は、その旨人事担当者まで申し出てほしいこと
(6)特例子会社又は関係会社の場合、取得した情報を親事業主に提供すること

  • 採用後に障害者を把握・確認する場合

採用後に把握・確認を行う場合には、雇用する労働者全員に対して、画一的な手段で申告を呼びかけることが原則です。メールの送信や書類の配布などの画一的な手段で行います。この際、収集する障がいの情報の利用目的もあわせて明示し、さらに「業務命令として、この呼びかけに対する回答を求めているものではないこと」を明らかにすることが望まれます。

【 呼びかけ方法として適切な例 】
・労働者全員が社内 LAN を使用できる環境を整備し社内 LAN の掲示板に掲載する、または労働者全員に一斉にメール配信する
・労働者全員に対して、チラシや社内報等を配布する
・労働者全員に対する回覧板に記載する

【 呼びかけの例として不適切な例 】
・労働者全員が社内 LAN を使用できる環境にない場合において、労働者全員にメール配信する
・障害者と思われる労働者のいる部署に対してのみチラシを配布する

  • 把握・確認した情報の更新について
  • 手帳の有効期限が経過したり、障害の状態に変更がない限り、把握・確認した情報を毎年度利用することについて、あらかじめ同意を得る
  • 手帳の有効期限や障害程度等の情報に変更がないか確認を行う場合、その頻度は必要最小限にとどめる
  • 本人に、情報の確認を行う理由や確認を行うに至った経緯を明確にしたうえで尋ねる
  • 本人に、情報の変更のあった場合には事業主に申し出ることを呼びかけ、情報の変更を申し出る場合の手続をあらかじめ示す
  • 本人から、障害者雇用状況の報告等のために利用しないよう要求された場合は、その要求が適正であると認められるときは利用を停止する
  • 把握・確認した情報の処理・保管方法

労働者から提供された情報を、労働者の意に反して不適切に使用することがないように次のような体制を整えることが求められます。

(1)安全管理措置等

  • ある労働者が障害者であることを明らかにする書類を備え付け、本人の死亡・退職・解雇の日から3年間保存する
  • 障害者雇用状況の報告書等の漏洩防止等、情報の安全管理のために必要な措置を講じる
  • 情報を管理する者の範囲を必要最小限に限定し、その範囲を従業員にわかるように明確にする
  • 情報管理者の守秘義務等を定めた個人情報保護法の取扱いに関する内部規定を整備する
  • 他の一般の個人情報とは別途保管することが望まれる
  • 障害者雇用状況報告の等のために取得した情報を、本人の同意なく他の目的のために利用しない

(2)苦情処理体制の整備

  • 把握・確認した情報の取扱いに関する苦情処理の担当者を明らかにする
  • 苦情処理の窓口は、産業医・保健師等・衛生管理者などの労働者の健康管理に関する業務に従事する者と連携できる体制にする

 

出典:厚生労働省「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要」より

 まとめ

企業にとっては、自社の労働者の情報を把握し適確に行政への報告書等を作成して提出することや、労働者から収集した情報をもとに今後の障がい者雇用の方針を立てることは多様な人材が活躍できる職場風土をつくるためにとても大切なことです。他方で、労働者にとってはプライバシー情報の取扱いを心配する方も多いと思われます。事業環境の変化が加速する世の中であっても柔軟に対応できる強い組織をつくるためには、労使ともに安心して働くことができる職場環境を整えることが重要といえます。

  • この記事を書いた人
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エスマイル社会保険労務士事務所 社会保険労務士 三浦 敬子

福岡・北九州を拠点に社会保険労務士として、労使双方が共に満足できる職場づくりをサポートしています。企業が理想とする職場を実現するために、新しい時代に対応する支援メニューを提供いたします。

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