1.求人を出した後に条件が変わることはある
求人を掲載した後に、会社側の事情が変わることがあります。
例えば、当初予定していた勤務時間では対応できなくなった、募集していた職種とは別の業務を担当してもらう必要が生じた、賃金や勤務日数を見直すことになった、といったケースです。
採用活動を始めた後に事情が変わること自体はあり得ます。
ただし、応募者は求人票や求人広告に記載された仕事内容、雇用形態、勤務時間、休日、賃金などを見て、「この条件なら働けそうだ」と考えて応募しています。
そのため、求人掲載後に条件を変更するときは、現在の求人情報を修正するだけでなく、すでに応募している人への対応も必要になります。
2.会社と応募者が「違う求人」を見ていることもある
求人サイトやSNSなどでは、掲載後も求人内容を比較的簡単に変更できます。これは便利な一方で、すでに応募者がいる場合には注意が必要です。
例えば、
応募時には、週3日・9時~15時・2,000円~2,600円と掲載されていた求人に応募した人がいるとします。
その後、会社が募集条件を、週5日・9時~18時・1,600円~2,100円へ変更し、求人サイトも修正した場合。
面接の日、会社側は現在掲載されている「週5日・9時~18時・1,600円~2,100円」の求人を前提に話をします。一方、応募者は自分が応募した「週3日・9時~15時・2,000円~2,600円」の求人を前提に質問します。
この場合、会社も応募者も、それぞれが見た情報をもとに話しているだけなのに、すでに前提が違っています。
その場で違いに気づけば整理できますが、「説明したつもり」「その条件で聞いたつもり」のまま採用まで進めば、働き始めてから「聞いていた内容と違う」という問題につながることもあります。
その結果、早期離職となれば、会社はせっかく採用した人材を確保できず、再び求人を出して採用活動をやり直さなければならないかもしれません。
求人情報を最新にすることと、すでに応募した人へ条件変更を知らせることは別です。

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3.求人条件が変わったら、応募者にも知らせる必要がある
職業安定法第5条の3では、労働者を募集する際に、業務内容、賃金、労働時間など一定の労働条件を明示しなければならないとされています。
さらに、すでに明示した条件を変更する、幅を持たせていた条件を特定する、当初の条件を削除する、新しい条件を追加するといった場合には、変更後の内容を明示する必要があります。
厚生労働省の指針では、すでに明示した内容と異なることとなった場合には、その明示を受けた求職者等へ速やかに知らせることとされています。また、変更後の条件が確定したら、求職者が労働契約を締結するかどうか考える時間を確保できるよう、可能な限り速やかに変更内容を明示する必要があります。
つまり、「求人サイトは新しい条件に直した」「変更したことは面接のときに話せばいい」というだけではなく、すでに応募している人にも、条件が変わったことを早い段階で知らせる必要があります。
変更内容については、応募者が十分に理解できる方法で明示します。厚生労働省は、当初の明示内容と変更後の内容を対照できる書面を交付する方法を示しています。
変更明示の方法については、厚生労働省資料もご確認ください。
4.条件が変わったのか、最初から実際と違う条件で募集していたのか
採用活動を始めた後に事情が変わり、パート・アルバイトとして雇用する方針を取りやめ、業務委託で仕事を依頼することになったのであれば、雇用の求人をそのまま残すのではなく、募集情報を業務委託の内容に切り替え、すでに応募している人にも方針が変わったことを明確に伝える必要があります。
一方、最初から業務委託で仕事を依頼する予定であるにもかかわらず、「パート・アルバイト」など雇用の求人として掲載していたのであれば、話は別です。
職業安定法第5条の4では、求人情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁止するとともに、労働者の募集を行う者には、募集情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めています。
さらに厚生労働省の指針では、労働者の募集と、請負契約による受注者の募集が混同されないよう表示しなければならないとされています。
雇用される仕事だと考えて応募したところ、選考が進んでから「実際は業務委託です」と説明されれば、応募者が仕事を選ぶ前提そのものが変わります。
なお、募集内容と実際に予定している条件を意図的に異ならせていた場合には、虚偽表示に該当する可能性があり、虚偽の広告や虚偽の条件による募集には罰則も定められています(職業安定法第65条第9号:6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)。
ただし、これは「求人条件を途中で変更したら罰則」という意味ではありません。募集後に事情が変わって条件を変更し、必要な変更明示を行う場合と、募集時から実際に予定している条件とは異なる内容を意図的に表示して募集する場合とは、分けて考える必要があります。
また、変更明示が適切に行われていない場合などには、職業安定法に基づく指導・助言や改善命令等の対象となり、命令等に従わない場合には公表されることがあります。
5.求人票は「最後に労働条件通知書を出せば関係ない」ものではない
求人票や求人広告に記載された条件と、労働契約との関係も確認しておきましょう。
一般に、求人票や求人広告による募集は、会社から労働契約を申し込む行為そのものではなく、求職者からの応募を促す「労働契約の申込みの誘引」と考えられています。そのため、求人票や求人広告に記載された条件が、それだけで直ちに確定した労働契約の内容になるわけではありません。
一方で、裁判例では、採用時に求人条件とは異なる内容について双方が合意したと認められる特段の事情がない限り、求人票に記載された労働条件が労働契約の内容になると判断されたものがあります。
また、求人票に賃金の見込額を示していたケースで、みだりにその金額を著しく下回る額で賃金を確定すべきではないとした裁判例も紹介されています。
したがって、求人時とは違う条件を最終的な労働条件通知書に記載すれば、それまでの食い違いが自動的に解消されるわけではありません。
求人時の条件を変更して採用するのであれば、変更内容を適切な時期に明示し、応募者がその内容を理解したうえで、変更後の条件について合意して労働契約へ進むことが重要です。
なお、求人票そのものは、労働基準法第15条に定める労働条件の明示とは別のものです。労働契約を締結する際には、改めて同条に基づく労働条件の明示が必要になります。そして、労働契約締結時に明示された労働条件が実際の条件と相違する場合には、労働者は直ちに労働契約を解除することができます。
求人段階で生じた食い違いを曖昧なまま採用まで持ち越し、契約時の説明や実際の働き方にまでズレが生じれば、法的な問題だけでなく、早期離職によって人材を確保できず、採用活動を一からやり直すことにもなりかねません。
6.やむを得ず求人条件を変更することになったら
求人条件は、応募者がその会社へ応募するかどうかを決める重要な情報です。そのため、募集開始後に安易に変更することは避けたいところです。
それでも、採用活動を進める中で会社の事情が変わり、やむを得ず募集条件を変更しなければならない場合もあります。
その場合には、法令上必要となる変更明示に加え、すでに応募している人との認識にズレを残さないよう、実務上も次のような流れで整理しておくとよいでしょう。
- 現在掲載している求人情報を修正する
- すでに応募している人へ変更があったことを速やかに知らせる
- 当初の条件から、どこがどう変わったのかを分かる形で明示する
- 応募者が変更後の条件でも選考を続けるか判断できる時間を確保する
- 面接担当者にも変更後の条件を共有する
- 最終的な労働条件通知書や雇用契約の内容と一致させる
変更理由について応募者から質問を受けた場合には、適切に説明することも求められています。
大切なのは、「求人を直したか」だけではなく、募集から採用まで、同じ条件が一本につながっているかを確認することです。

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7.求人は「人が集まれば成功」だけではない
求人票には、人に応募してもらうための役割があるため、仕事内容や職場の魅力が伝わる内容にすることも大切です。
ただ、人が集まればそれだけでよいわけではありません。
掲載した勤務時間で実際に雇用できるのか。
賃金や手当は就業規則・賃金規程と一致しているのか。
労働条件通知書には同じ内容を記載できるのか。
採用後の勤怠管理や給与計算で実際に運用できるのか。
求人を出す前に、採用後までつながる労働条件として整理しておくことが重要です。
募集時の条件、面接での説明、労働条件通知書、実際の働き方がつながっていれば、応募者との認識のズレも起こりにくくなります。
採用活動を始める前に確認しておきたい事項については、関連記事「採用活動を始める前に何を整える?求人条件・入社準備と採用代行の注意点」でもご紹介しています。
求人を出す前に、労働条件や運用を確認したい場合
弊所では、求人時に示す労働条件と、労働条件通知書・就業規則・実際の運用との間にズレがないかを確認する労務診断も行っています。
「この条件で募集してよいか」「採用後もこの条件で運用できるか」を一度整理してから採用活動を始めたい場合にもご利用いただけます。