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給与計算ミス|「いつから変える?」で迷いやすい保険料控除

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給与計算ミス|「いつから変える?」で迷いやすい保険料控除

4月は給与控除で「ズレ」が最も起きやすい時期

4月は、給与計算に関する変更が一年で最も重なる時期です。実務でも、「何を、いつから変えればよいのか」「どの給与から新しい料率を適用するのか」といったご相談が増える時期でもあります。

特に注意が必要なのは、以下の項目です。

  • 雇用保険料率の変更
  • 健康保険・介護保険料率の変更
  • 住民税の切替前後の処理
  • 令和8年度から始まる「子ども・子育て支援金」への対応

特に、

4月支給の給与で何を控除するのか
3月分保険料はいつ控除するのか
新しい料率はいつから適用されるのか

といった控除項目や控除タイミングが複雑になりやすい時期でもあります。

これらのタイミングは、締日や支給日の設定によって異なることもあり、長年給与計算を行っている担当者であっても、控除漏れや控除ミスが起きやすい時期といえます。

なぜ給与控除の事故は起きるのか

給与控除のミスは、単純な計算間違いだけで起きるわけではありません。

多くの場合、「仕組みのズレ」が原因となって発生します。

  • 保険料率が変わる「対象月」と、実際に給与から引く「支給月」のズレ
  • 欠勤や遅刻の情報が、計算締切までに確定していない
  • 手当の追加や昇給の反映タイミングの失念
  • 「とりあえず翌月で調整すればいい」という、根拠のない運用

特に、「前もこうしていたから」「とりあえず翌月に調整すればいい」などの、担当者の経験や感覚に頼っている場合、こうした「小さなズレ」が積み重なり、気づいた時には大きなトラブルに発展しているケースも少なくありません。

【重要】令和8年度・保険料率と適用時期のまとめ

まずは、令和8年度の主な保険料率と適用時期を整理します。間違えやすいのは「何月分の保険料を、何月の給与で引くか」です。

保険保険料率適用時期
雇用保険一般の事業
労働者負担:1000分の5
会社負担:1000分の8.5
令和8年4月1日以降に「締日」がくる給与から適用
健康保険料率
(協会けんぽ・福岡県)
10.11%(11.73%)を労使折半で負担
 ※( )内は介護保険料対象者
令和8年「3月分」の保険料から適用
子ども・子育て支援金
(協会けんぽ・福岡県)
0.23%を労使折半で負担令和8年「4月分」の保険料から適用

控除ミスを防ぐ「3つのチェックポイント」

(1)雇用保険:ポイントは「締日」

令和8年度の雇用保険料率は、「4月1日以降に締日が到来する給与計算期間」から変更となります。

  • 例: 3月末締め・4月払いの給与 ⇒ 旧料率
  • 例: 4月20日締め・4月払いの給与 ⇒ 新料率

「4月払いから変える」と丸暗記せず、自社の締日を確認することがミスを防ぐ鍵です。

なお、雇用保険料率は毎年4月改定とは限りません。令和4年には10月改定が行われているため、「毎年4月」と決めつけず、厚労省の発表時期を確認することが重要です。

(2)社会保険料:ポイントは徴収タイミング

社会保険料は「3月分」から保険料率が変わりますが、これをいつの給与から控除するかは会社によって違います。

月末締めの給与計算をしている企業では、4月に支給する給与から3月分の保険料を控除していることがほとんどです(翌月控除)。他方、月半ば締め(例:3月20日締め、3月末支給)の場合、3月分の保険料を3月払いの給与から控除していることがあります(当月控除)。

会社が、従業員から預かる保険料については会社ごとのタイミングにより異なるため、自社が「何月分の保険料を、何月の給与で引いているか」を正確に把握しておく必要があります。

(3)子ども・子育て支援金:ポイントは「1ヶ月のズレ」

令和8年4月から始まる子ども・子育て支援金制度についての保険料は、健康保険料とあわせて徴収されることになっています。

翌月控除方式の会社の場合、4月支給の給与から控除されるのは3月分の健康保険料(新料率が適用)ですが、子ども・子育て支援金については4月分保険料から対象となります。

実務では、給与計算ソフトで翌月控除にあわせて処理されることが多いと思われますが、健康保険料と子ども・子育て支援金の開始時期には1ヶ月のズレがあるため、念のため給与計算ソフトの設定や控除開始月を確認しておくと安心です。

もしミスが起きてしまったら?(ケース別対応)

保険料を多く控除してしまった場合

社会保険料は会社が「預かっている」お金ですので、放置は信頼を損ないます。過剰分を速やかに返金し、返金記録を残すのが原則です。ただ、返金する額がさほど大きくないときには、従業員の了承を得て、翌月の給与計算で控除すべき社会保険料を減額し調整することが実務的には多いかと思われます。

社会保険料を控除し忘れた(少なかった)場合

本人の同意を得た上で、次回の給与から差額を徴収します。ただし、数ヶ月分をまとめて高額に控除すると、従業員の生活に影響を与え、トラブルの元になります。事前の丁寧な説明と、必要に応じた分割徴収の検討が不可欠です。

本当の問題は「計算ミス」ではなく「ルール不足」

給与計算で問題が起きたとき、「担当者のミス」として片付けていませんか?

もちろん、社会保険や雇用保険といった保険料に関するルールや、賃金に関する労働基準法のルールに関する十分な知識を持つことが必要であることは言うまでもありません。しかし、根本的な原因は別にあります。

  • どのタイミングで何を控除するか
  • ミスが起きた場合にどう調整するか
  • 本人への説明をどう行うか
  • 同じミスが繰り返されないようにするために、どう対策するか

といった整理が十分ではないことが、根本的な原因になっているケースも少なくありません。

最後に

表面的には毎月問題なく処理できているように見えても、「誰が見ても同じ判断ができる状態」になっている会社は驚くほど少ないのが現実です。

  • 保険料率の変更、報酬月額の変更、退職時の保険料控除の処理があいまいになり、ミスが生じている
  • 控除漏れや過払いが起きたとき、対応方法が決まっていない
  • 賃金控除の労使協定で定めるべき控除項目が整理できていない
  • 給与計算が属人的になっている

担当者しか分からない運用になっている場合、担当者の退職や異動をきっかけに、一気に混乱することもあります。今の給与計算が、誰が見ても同じ判断ができる状態になっているか。一度、実際の運用とルールを見直してみてもよいかもしれません。

給与計算は、単なる事務作業ではありません。会社のルールや、会社と従業員の信頼関係を支える労務管理の土台のひとつです。


給与計算の考え方や、エスマイルで対応している内容については、下記ページでご案内しています。

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  • この記事を書いた人

エスマイル社会保険労務士事務所 社会保険労務士 三浦 敬子

北九州・小倉南区を拠点に、中小企業の労務顧問、就業規則、給与計算、助成金などを支援。制度説明だけで終わらず、経営者の悩みや迷いを整理し、次に何をすべきかが見える支援を大切にしています。
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