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【不妊治療と仕事の両立支援】企業が取り組む新しい働き方改革

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【不妊治療と仕事の両立支援】企業が取り組む新しい働き方改革

はじめに

日本は長年、少子高齢化社会に直面しており、年々少子化が進んでいます。内閣府がまとめた「少子化社会対策白書」によると、少子化の背後には、経済的な不安、就労環境の課題、結婚と出産への価値観の変化など、多岐にわたる要因があるとされています。

厚生労働省が、令和6年3月29日に発表した資料(「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について)によると、不妊治療中または治療経験者の55.3%が仕事と治療の両立に成功していると回答していますが、残りの回答者は両立に失敗し、仕事を辞めたり、治療をやめたり、雇用形態を変更したりするなど、仕事との両立において多くの困難に直面していることが明らかになりました。

そこで、今回の記事では、労働者が抱える働き方に関するニーズと、それに応える企業の取り組みをご紹介します。

厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について より

仕事と治療の両立支援を行っている企業割合:約26%

多くの労働者にとって、仕事と治療の両立は重要なテーマです。しかし、労働者と企業の間には、時に誤解やすれ違いが生じます。企業は従業員のプライバシーを尊重しようとし、その一方で労働者は不妊治療に関する悩みを職場に申し出ることを躊躇します。このような環境のもと、労働者が仕事と治療の両立に苦労する状況が見えにくくなっていることが考えられます。

労働者の仕事との両立についての具体的な悩み

不妊治療中の労働者が直面する主な課題は、治療のスケジュールと仕事のバランスであることがわかります。仕事を辞めたり、治療をやめたり、雇用形態を変更したりするなど仕事と治療の両立ができなかった方の、両立できなかった理由では「待ち時間など通院にかかる時間が読めない、医師から告げられた通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しいため」「精神面で負担が大きいため」「体調、体力面で負担が大きい」、「通院回数が多いため」などが挙げられています。

治療について職場に理解を求めることに躊躇する労働者も多く、一人で悩みを抱え込んでしまうことが現状です。不妊治療にあたり労働者が直面するこれらの課題に対し、労働者は職場に対し、時間単位の休暇取得やテレワークの導入、特別休暇制度などの柔軟な勤務体制の整備を望んでいることがわかります。

企業で行われている取組み

上記のような労働者のニーズに対し、さまざまな支援に取り組む企業もあります。厚生労働省の資料によると、企業が行う両立支援には「半日単位・時間単位の休暇制度」が最も多く、次いで「テレワーク(在宅勤務制度)」「短時間勤務」「フレックスタイム制度」「始業・終業時刻の繰り下げ・繰上げ制度」などの就労環境面への支援が行われています。

企業で行われている柔軟な勤務体制による支援
  • 時間単位年休
    労使協定を締結することなどの手続きを取ることで、労働者に付与された年次有給休暇のうち1年につき5日間以内の範囲で、1時間単位の年次有給休暇を取得できるようになります。不妊治療の通院などで短時間の休暇が必要なときに、時間単位年休制度が労働者にとって大きな助けとなります。
  • 半日単位年休
    不妊治療においては、一日単位での休暇が必要でない場合や、午前中や午後だけ通院したい場合に便利です。労働者は仕事と治療の両立をより柔軟に計画できるようになります。
  • テレワーク
    在宅勤務やリモートワークを可能とする制度で、通院のための移動時間を節約できるほか、体調が優れない時でも働き続けられる選択肢を提供します。治療の負担を軽減しつつ、労働者の生産性を保つことが可能です。
  • フレックスタイム制度
    労働者が自身の勤務時間を柔軟に設定できる制度です。通院や治療のために、出勤時間を遅らせたり、早めたりすることが可能になります。これにより、労働者は自身の業務に対応できる時間帯を調節し、私生活のスケジュールに合わせて柔軟な働き方ができるようになります。
  • 特別休暇制度
    治療に必要な時間を確保することを目的とした不妊治療のための休暇制度です。この休暇は、年次有給休暇とは別に設定されており、不妊治療に限らず私傷病休暇として1年に数日間を付与する企業もあります。特別休暇制度があることにより、労働者が治療に集中するための時間を確保しつつ、仕事への責任感からくる罪悪感やストレスを軽減する効果も期待できます。

まとめ

不妊治療をする(していた)労働者からのアンケート結果によると「有給休暇など現状ある制度を取りやすい環境作り」が企業に求められていることがわかります。これから治療と仕事の両立を支援する働き方の整備に取組む企業の皆さまの場合は、まず、時間単位や半日単位での有給休暇をとりやすい環境整備から始めると取組みやすいことが考えられます。

特別休暇制度を取り入れる場合は、両立支援のための助成金の活用を検討することも一つの方法です。

時間単位・半日単位の年次有給休暇特別休暇や、特別休暇制度が導入され、私生活や健康と仕事を両立しやすい働き方が整えられると、労働者は安心して治療と仕事を両立できるようになります。勤務制度を整備することは、今や企業の人材確保にとって非常に重要な施策といえます。制度を利用するうえでの細かなルール作りや運用、助成金のご活用をご検討の場合は、エスマイル社会保険労務士事務所が丁寧にサポートいたしますので、お気軽にお問合せください。

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