コラム

【労働トラブルを防ぐ】就業規則の効力を発揮させるための重要ポイント

  1. HOME >
  2. NEWS&TOPICS >
  3. コラム >

【労働トラブルを防ぐ】就業規則の効力を発揮させるための重要ポイント

就業規則とは

就業規則は、労働者の労働条件や職場規律などを定めた雇用に関するルールです。就業規則には、新規で雇い入れた従業員の労働条件を定める効力、労働者の労働条件を変更する効力、労働条件の最低基準を定める効力があります(労働契約法7条、10条、12条)。

就業規則には、給与や賞与の支給基準や計算方法、休暇、育児や介護のルール、服務、ハラスメント防止、機密情報の管理、退職または退職事由、解雇事由、懲戒の基準・種類・手続などの、様々な雇用の場面について細かなルールが定められています。これらについて労働契約で定めない場合、それらについて合理的な内容が定められた就業規則が労働者に周知されていれば、就業規則に定めた内容が労働契約の内容として補充されることとなります。

なお、使用者が個別の労働者と締結した労働契約の内容が、就業規則に定めた基準を下回る場合は、その部分が無効となり、無効となった部分は就業規則で定めた基準が適用されます(労働契約法第12条)。この結果、使用者と個々の労働者の間で、労働者にとって就業規則よりも有利な労働条件で合意した場合は当該合意が有効となる一方で、不利な労働条件である場合はその部分が無効となり就業規則に定められた基準まで労働条件が引き上げられることとなります。

また、就業規則と労働基準法などの法令の関係では、就業規則に定める事項は法令に反してはならず(労働基準法第92条)、仮に就業規則に法令に反する内容が含まれている場合は、その部分が無効となり、代わりに法令に定められた基準が適用されることとなります。

このような仕組みによって、労働条件は、使用者と労働者の個別の合意による成立を基本としながらも、就業規則と労働基準法などの法令がそれぞれ最低基準としての機能を果たすこととなります。

就業規則の導入にあたり企業が義務として行う事項

企業が就業規則を作成または変更し、その内容について有効な効力を発揮するためには、以下の事項を行うことが必要です。

  • 労働基準法で就業規則に定めることが義務づけられている「絶対的必要記載事項」が記載されていること(労基法89条)
    就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります(労働基準法第89条)。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴取すること(労働基準法90条)
  • 作成した就業規則を労働者に周知すること(労働基準法106条1項)
  • 所轄労働基準監督署に届け出ること(同法89条)
    常時10人以上の労働者(※)を使用している事業場である場合は、作成・終始した就業規則を、過半数組合または労働者の過半数代表者からの意見書を添付して、所轄労働基準監督署へ届出なければなりません。これは、就業規則を変更したときも同様です。
    ※この場合の「事業場」とは、工場や事務所、店舗等の単位を指し、「労働者」にはパートタイム労働者やアルバイトなども含まれます。なお、ときには10人未満になることはあっても、常態として10人以上の労働者を使用している場合にもあてはまります。

就業規則の効力発生時期

就業規則は、法令に反することなく、かつ合理的な内容が定められ、それが周知されていれば、その企業で働くうえでのルールとして効力を発揮します(労働契約法第7条)。

就業規則に定めた内容が有効となるのは、就業規則が労働者に周知された時期以後で当該就業規則に施行期日として定められた日とされています。就業規則に定められた重要な労働条件を法的に有効なものとするためには、必要な事項を就業規則に規定して労働基準監督署に届け出るだけでは足りず、労働者に周知されていることが必要です。

労働基準法では、就業規則の周知方法について以下のように定めています(労働基準法第106条1項、労働基準法施行規則52条の2)。

常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること

「常時」とは、事業場の見やすい場所へ掲示、またはいつでも見られるように備え付けることを指します。「作業場」とは、事業場内において密接な関連のもとに作業が行われている個々の現場をいい、主として建物別などによって判別すべきとされています。また、労働者が自由に出入りできない場所や自由に開錠することができないデスクや棚に配置することによっては「見やすい場所に掲示し又は備え付けること」という方法によらないものと判断されますので注意が必要です。

書面を労働者に交付すること

採用時や規則が変更されたとき等のタイミングで、都度就業規則の写しを交付することを意味します。

磁気テープ、磁気ディスク、その他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を確認できる機器を設置すること

就業規則をデジタルデータとして記録し、そのデータにアクセスできる機器を各事業場に備え付ける等して、労働者がいつでも閲覧できるようにする方法です。この方法による場合は「労働者に電子機器の操作権限が与えられていること」と「電子機器を使って就業規則を閲覧するための方法が周知されていること」の2点が要件とされています。

就業規則に定められた内容を有効にするためには、実質的な周知が行われていることが必要です。就業規則が周知されていないのだから無効である等の主張が行われないようにするためには、自社に最適な実質的な周知方法を選択し周知徹底したうえで、周知が行われていることの客観的な証拠を集めておくことをおすすめします。

おわりに

就業規則は『会社の法律』とも言われており、何か問題が起きたときには、何を基準として判断し解決するかのの拠り所となります。
大小を問わず企業で起こる問題や経営者の悩みごとに対処する場面では、就業規則でどのように定められているかの確認からスタートすることになります。そのため、日頃から労使ともに就業規則で定められた労使が遵守すべきルールをいつでも把握し、確認できる体制を整えておくことが健全で秩序が保たれた職場をつくるための近道であると言えます。

当事務所では、働くうえでの労使の拠り所として、日頃から就業規則を手に取ってお読みいただけるよう、わかりやすく明確な内容の就業規則を作成しております。就業規則の作成や運用、社内に何らかの困りごとが生じたけれど規則等を含めてどのように解決したらいいかアドバイスがほしいとお考えの企業さまを支援いたします。お気軽にお問合せ下さい。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

エスマイル社会保険労務士事務所 社会保険労務士 三浦 敬子

福岡・北九州を拠点に社会保険労務士として、労使双方が共に満足できる職場づくりをサポートしています。企業が理想とする職場を実現するために、新しい時代に対応する支援メニューを提供いたします。

-コラム