はじめに
少子化に伴う労働力人口の減少により企業間の採用競争が激化するなか、企業が事業活動を継続して行うための重要なポイントのひとつとして、人材の定着や採用の強化が挙げられます。
企業が、求人への応募数確保や採用後の定着強化のための取組みのひとつとして、厚生労働省が推進する「ユースエール認定」の取得があります。今回の記事では、ユースエール認定制度についてご紹介いたします。
ユースエール認定とは
若者の雇用の促進等を図り、その能力を有効に発揮できる雇用環境を整備することを目的として制定された「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)が、平成27年10月1日から順次施行されています。
「ユースエール認定」は、厚生労働省が、若者雇用促進法に基づいて若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業に対して認定する制度です。
企業がユースエール認定を受けるメリット
ユースエール認定を受けると、若者の雇用管理が良好に行われている企業として優秀な人材の確保などが期待されます。また、厚生労働省からの認定を受けた企業は、以下の支援を受けることができます。
ハローワークなどの就職支援拠点で重点的PRを実施
「わかものハローワーク」や「新卒応援ハローワーク」などの支援拠点で 認定企業を積極的にPRすることで、若者からの応募増が期待できます。
「若者雇用促進総合サイト」に掲載可能
若者の採用・育成に積極的な企業などに関するポータルサイトに掲載することで、入社後の雇用環境をアピールすることができます。
認定企業限定の就職面接会などへの参加が可能
各都道府県労働局・ハローワークが開催する就職面接会などで、正社員就職を希望する若者などの求職者と接する機会を得ることができます。
自社の商品、広告などに 認定マークの使用が可能
認定企業の商品や広告などにユースエール認定マークを付けることができ、ユースエール認定を受けた優良企業であることを対外的にアピールすることができます。
日本政策金融公庫による融資制度における優遇措置
株式会社日本政策金融公庫(中小企業事業)において実施している「働き方改革推進支援資金」を利用する際、基準利率から-0.65%での融資を受けることができます。詳細は、株式会社日本政策金融公庫のホームページをご覧ください。
公共調達における加点評価
公共調達のうち、価格以外の要素を評価する調達(総合評価落札方式・企画競争方式)において、ユースエール認定企業として加点評価を受けることができます。
ユースエール認定の基準
ユースエール認定を受けるためには、以下の基準を満たす必要があります。
- 中小企業(常時雇用労働者が300人以下)であること
- 学卒求人など、若者対象の正社員の求人申込みまたは募集を行っていること
少なくとも卒業後3年以内の既卒者が応募可であることが必要です。 - 離職率要件を満たすこと
直近3事業年度の新卒者などの正社員として就職した人の離職率が20%以下であること。直近3事業年度の採用者数が3人または4人の場合は、離職者数が1人以下であれば可。 - 所定外労働時間数、法定時間外労働時間数の要件を満たすこと
前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下かつ、月平均の法定時間外労働60時間以上の正社員が1人もいないこと。 - 有給休暇の取得要件を満たすこと
前事業年度の正社員の有給休暇の年間付与日数に対する取得率が平均70%以上であること、または年間取得日数が平均10日以上であること。 - 育児休業の取得率要件を満たすこと
直近3事業年度で男性労働者の育児休業等取得者が1人以上いること、または女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であること。男女ともに育児休業などの取得対象者がいない場合は、育休制度が定められていれば可。 - 「人材育成方針」と「教育訓練計画」を策定していること
- 以下の青少年雇用情報を公表していること
(1)直近3事業年度の新卒者などの採用者数・離職者数、男女別採用者数、平均継続勤務年数
(2)前事業年度の月平均の所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員・管理職の女性割合
(3)研修内容、メンター制度の有無、自己啓発支援・キャリアコンサルティング制度・社内検定等の制度の有無とその内容 - 過去3年間に新規学卒者の採用内定取消しを行っていないこと
- 過去1年間に事業主都合による解雇または退職勧奨を行っていないこと
- 過去3年間に認定企業の取消を受けていないこと
- 法令その他の基準に抵触していないこと
認定取得へ向けたステップ
ユースエール認定企業となるためには、各都道府県労働局へ申請が必要です。各都道府県労働局において上記の認定基準を満たしていることを確認できた場合は、認定通知書が交付されます。
- 現状で自社が認定基準を満たしているかをチェック
基準を満たしていない場合は、目標を定めて計画的に改善を図りましょう - 認定申請書類の準備
申請には次のような書類の準備が必要です
・基準適合事業主認定申請書
・新規学卒者等採用実績及び定着状況報告書
・人材育成方針・教育訓練計画報告書
・労働時間等実績報告書
・有給休暇等取得実績報告書
・育児休業等取得実績報告書
・関係法令遵守状況報告書
・誓約書
・企業情報報告書 - 各都道府県労働局へ申請
申請書類一式を届出ます。インターネットにより届け出ることも可能です。 - 各都道府県労働局から認定通知書の交付を受ける
まとめ:認定基準から言えること
ユースエール認定基準を見渡すと、認定を受けようとする企業には、法令に則った適正な雇用管理や、入社後に従業員が企業の戦力となっていち早く職場や業務に合流して能力を発揮できるような雇用環境を整えることが求められていることがわかります。
ユースエール認定は、ただの称号ではなく、「若者にとって良い職場環境を提供している」という証です。
認定を取得する過程で、職場の環境を見直す良い機会になります。若者が働きやすい環境を整えることで、若年層の労働者だけではなく、また新たに採用した労働者だけではなく、すべての労働者や職場の働く環境が整備されます。このことにより、全社員のモチベーションの向上が図られ、職場の生産性を向上へ歩みを進めることが可能になります。
ユースエール認定を受けることで、従業員の働く環境に配慮している企業であることを社内・社外にアピールでき、企業はさまざまなメリットを享受することができるようになります。当事務所は、将来の事業活動を見据えて従業員の働き方やワークルールを整えたいとお考えの企業さまや、採用や定着の向上へ向けた対策をお考えの企業さまを支援いたします。
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