企業の皆さまは、2024年4月1日以降に労働契約を締結する際に、明示しなければならない労働条件が変更となることについて内容把握と具体的対応を進めていらっしゃるのではないかと思います。2023年10月12日に厚生労働省から発表された行政通達やQ&A等の資料に、詳細が記載されておりましたので、その内容を簡単にご紹介いたします。
なお、労働条件明示ルール変更の内容については過去記事に掲載しておりますので、内容をこれから把握なさりたい方はご参考下さい。
就業場所や業務内容の変更範囲
2023年4月1日以降に労働者に明示する労働条件については、雇入れ直後(※)の就業場所や仕事内容だけではなく、将来的に変更となる可能性が有る就業場所や仕事内容を書面明示しなければなりません。
人員不足になった事業場の応援業務に臨時的に就かせる場合や、出張や研修のために就業場所・業務内容が一時的に変更となる場合は、あくまで一時的な変更であり、労働条件を明示する際の変更の範囲に記載することは求められていません。
就業場所や業務内容の将来的な変更可能性を明示することで、労働者がキャリアプランを立てやすくなることが考えられます。有期雇用契約で働く労働者については、各有期雇用契約の期間中に、就業場所や業務内容の変更可能性がある場合には、その変更の範囲を記載することが求められています。もちろん、有期雇用契約を更新した後に就いてもらう可能性がある業務や就業場所を明示することができると、長期的なキャリア選択に資すると思われますが、今回の改正においてはそこまでは求められておらず、少なくとも各有期雇用契約期間中の変更範囲を明示することが求められています。有期雇用契約の方を雇用する企業の皆さまは、後述の無期転換権の有無等を明示する必要がありますので、しっかりと対応するようにしましょう。
無期転換に関する事項
有期雇用契約が5年を超えて更新された場合、事業主に対して労働者が無期雇用契約への転換を申出ることで無期雇用労働者となるという、いわゆる無期転換ルールがあります。この無期転換ルールは、平成25年4月以降に開始した有期雇用契約が対象となりますが、その後、無期転換ルールの認知や理解がなかなか進まなかった等の傾向が見られました。そのような事情を背景に、今回の改正によって、事業主が、有期雇用契約で働く労働者に対し、有期雇用契約の締結ごとに、各有期雇用契約期間中に無期転換を申込む権利の有無を明示するように改正されることとなりました。有期雇用契約で働く労働者がいる企業の皆さまは、雇入れ時と契約更新時に、無期転換権の有無を明示しなければなりませんので、今後より一層、各労働者ごとに契約更新回数や通算期間を把握することが重要になります。
無期転換権が発生する有期雇用契約である場合、有期雇用契約で働く労働者が無期転換を申込み無期雇用契約となった場合の労働条件もあわせて明示しなければなりません。労働条件が、有期雇用契約期間中と同じ(期間を除く)であれば、「労働条件の変更有無:なし」などと記載することになりますが、有期雇用契約期間とは異なる労働条件で雇用する場合には、その異なる労働条件もあわせて明示することが必要となります。
有期雇用契約の更新上限
有期雇用契約の更新回数や期間に上限がある場合は、有期雇用契約で働く労働者に対し、雇入れ時と契約更新時に、労働条件明示書等で上限回数や期間を明示することが必要となります。新たに上限を設け、あるいは上限を引き下げることとなる場合は、事前に有期雇用契約で働く労働者に対してその理由を説明することが必要です。
行政通達(基発1012第2号 令和5年10月12日)では、事業主が労働者に上限を設けることとした理由を説明するにあたっては文書配布や資料を用いた説明を行い、変更となる部分(上限回数や期間)を書面交付等により行うことが望ましいとされています。
おわりに
労働者を雇用する場合には、労働基準法で定められた労働条件や、パートタイム・有期雇用労働法等の雇用関係の法令で定められた事項を明示しなければなりません。今回の改正は「労働基準法施行規則」と「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正であり、それらに関連して厚生労働省労働基準局長通達やQ&Aが発表されています。先々、行政機関から指導等を受けることがないように改正内容を把握し対応することが重要です。さらに、企業の皆さまは、今後の労働者の配置や活用の範囲等の方向性を検討し、時代の流れに添った事業のご予定を立てることが重要といえます。
改正内容や、パート・有期雇用等で働く方の待遇や、従業員の給与構成などの人事面を検討するにあたり、ご疑問点・ご相談などがありましたら当事務所までお気軽にお問合せ下さい。