令和5年10月から適用される地域別最低賃金額と発効日が各都道府県労働局から順次発表されています。投稿日時点ではまだ令和5年度の最低賃金額は正式決定・発表が済んでいない都道府県もありますが、当事務所が所在する福岡県の地域別最低賃金は、令和5年10月6日を発効日とし、941円(1時間)になることが発表されています。
地域別最低賃金や発効日は、最終決定した後に各都道府県労働局のHPにて発表されますので、別途ご確認ください。 10月以降の労働条件を9月時点と同様とする場合、労働条件によっては、最低賃金の発効日以降の最低賃金額を下回ってしまうことも考えられます。そのようなことがないよう、最低賃金の発効日前までに、9月時点の賃金水準が、令和5年10月から適用される地域別最低賃金額以上の賃金となっているかを念のために確認することをおすすめします。なお、確認するにあたっては、特に下記事項に留意しましょう。
最低賃金の対象となる賃金
最低賃金の対象となる賃金は原則として「毎月決まって支払われる賃金」に限定されており、実際に支払われる賃金から以下のものを除いた賃金をもとに「1時間当たりの賃金額」を求めて、その額が最低賃金額以上となっているかを確認することになります。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
- 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
- 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
最低賃金額以上となっているか確認する方法
時給、月給などの賃金支払い形態によって最低賃金額以上の賃金額になっているかを確かめる方法が異なります。
(1)時間給の場合
最低賃金額は時間額で設定されていますので、時間給の場合は時給額と最低賃金額を比較して最低賃金額以上の金額となっているかを確認します。
時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
(2)月給制の場合
月単位で支払っている給与を時間額に換算し、最低賃金額以上の賃金額となっているか確認します。
月給 ÷ 1ヶ月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
(3)日給制の場合
日単位で支払っている給与を時間額に換算し、最低賃金額以上の賃金額となっているか確認します。
日給 ÷ 1日平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
ただし、地域別最低賃金額ではなく、特定最低賃金の適用対象となっている場合は、最低賃金が日額で定められていることがあります。その場合は、下記算式で確認します。
日給 ≧ 最低賃金額(日額)
(4)出来高払制(インセンティブ)の場合
出来高払によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払によって労働した総労働時間数で除して1時間当たりの金額に換算して、最低賃金額以上となっているかを確認します。
出来高手当 ÷ 残業時間も含めた月間総労働時間数 ≧ 最低賃金額(時間額)
(5)複数の支払形態を組み合わせている場合
上記(1)~(4)の組合せにより賃金を支給している場合は、上記(1)~(4)の左辺の合計額が最低賃金額以上となっているかを確認します。
計算例:日給+月給の場合
★勤務条件:1日所定労働時間6時間、年間労働日数240日
・基本給:5,400円/日
・資格手当:24,000円/月
・通勤手当(実費支給):1,000円/日
★8月勤務分の給与:勤務日数20日、法定内労働時間120時間
・基本給:108,000円
・資格手当:24,000円
・通勤手当:20,000円
合計:152,000円を支給
★最低賃金額以上となっているかどうかの確認
(1)支払われた給与から最低賃金の対象外となる賃金を控除
通勤費は最低賃金の対象外であるため控除する
(2)基本給(日給)と資格手当(月給制)のそれぞれを時間額に換算し合計
(A)基本給 5,400円÷6時間=900円
(B)資格手当 24,000円÷(240日×6時間÷12ヶ月)=200円
(A)+(B)=1,100円
(3)(2)で求めた金額(A+B)が最低賃金額を下回る場合は、最低賃金額以上となるように賃金額を引き上げることが必要。
おわりに
現状の勤務条件のまま労働者を勤務させた場合、発効日以後の最低賃金額をクリアしているかを上記の確認方法により確認しておきましょう。「発効日以後の勤務」について最低賃金額が改定(福岡県は941円:令和5年度)となりますので、夜勤者がいる企業の場合は要注意です。3交代制勤務のもとで働く労働者のうち、夜勤シフトの労働者が最低賃金の改定日をまたいで勤務することがありますが、この場合は、0時より新しい最低賃金の適用となるように給与を支払うことが必要です。
▼▼令和6年10月からの地域別最低賃金(福岡県)については下記の記事内で解説しております。