はじめに
育児介護休業法は、過去の法改正により、企業に子育てと仕事の両立をしやすい職場環境を整えることを求めています。令和以降に施行された法改正の内容は以下のとおりです。
- 2021(令和3)年1月1日改正
子の看護休暇・介護休暇の1時間単位取得、看護休暇を取得できる従業員の対象拡大 - 2022(令和4)年4月1日改正
雇用環境整備、育児休業制度の周知義務・育児休業の取得意向の確認義務、有期雇用の従業員の育児休業の取得要件の緩和 - 2022(令和4)年10月1日改正
産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
育児休業の分割取得 - 2023(令和5)年4月1日改正
育児休業の取得状況の公表義務(常時雇用する労働者数 1,000 人超の企業)
これらに加えて、令和7年4月1日からは以下の法改正が行われることとなっております。
- 所定外労働の制限(残業免除)の対象者拡大
- 育児のためのテレワークの導入が努力義務化
- 子の看護休暇の見直し
- 育児休業取得状況の公表義務を300人超の企業に拡大
- 柔軟な働き方を実現するための措置等を事業主の義務化(※)
- 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮を事業主の義務化(※)
※令和6年5月31日から1年6ヶ月以内の精励で定める日より施行
育児休業取得状況の公表義務の対象企業が拡大
投稿日時点の育児休業法第22条の2では、常時雇用する労働者数が1,000人を超える企業に対し、年1回以上、育児休業の取得状況を公表する義務があると定められています。これに基づいて、投稿日現在において常時雇用する労働者数が1,001人以上の企業は、男性労働者の育児休業等取得率を社外に公表しています。
令和7年(2025年)4月1日からは、この義務が常時雇用する労働者数が300人を超える企業に適用されることが決まっており、従来よりも多くの企業が自社の育児休業の取得状況を公表することを義務づけられることになります。
公表する事項
次の【1】または【2】のいずれかを公表することとなります。
【1】
育児休業等をした男性労働者の数 ÷ 配偶者が出産した男性労働者の数
【2】
(育児休業等をした男性労働者の数 + 小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度 を利用した男性労働者の数の合計数) ÷ 配偶者が出産した男性労働者の数
公表義務のある「常時雇用する労働者」300人超
「常時雇用する労働者」とは、以下の労働者を指し、これらの合計労働者数が301人以上である場合、令和7年4月1日以降、自社の育児休業の取得状況を公表することが義務となります。
- 期間の定めなく雇用されている労働者
- 期間の定めのある雇用により過去1年以上引き続き雇用されている労働者
- 雇入れ時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる労働者
「300人超」には、一時的に300人以下になったとしても、常態として300人を超える労働者を雇用している場合も含まれます。常時雇用する労働者数が300人を超えた時点から公表の義務が課されます。
取得状況の対象期間と公表時期
法改正施行日以降、常時雇用する労働者数が301人以上の企業は、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)における自社の育児休業の取得状況を公表することとなります。この場合の事業年度とは、企業の会計期間を意味しますので、事業年度末終了(決算月終了)から3ヶ月以内に、公表することが求められています。
例えば、事業年度が6月1日から5月31日である場合、8月末までに公表することとなります。
公表方法
厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」での公表または自社のHP等での公表により、一般の方が閲覧できるようにすることが求められています。
算出にあたっての注意事項
- 休業を分割して取得した場合
育児休業を分割して2回取得した場合、1人として数えます。 - 育児休業と育児目的休暇の両方を取得した場合
休業や休暇が同一の子について取得したものである場合は、1人として数えます。 - 「育児を目的とした休暇」とは
休暇の目的の中に「育児を目的とするもの」であることが就業規則等で明らかにされている休暇制度です。年次有給休暇や、育児休業や子の看護休暇など法律で定められた制度は除きます。 - 事業年度をまたがって育児休業を取得した場合や、分割して複数の事業年度に育児休業を取得した場合
育児休業を開始した日を含む事業年度の取得として計算します。また、分割して取得した場合は、最初の育児休業等の取得のみを計算の対象とします。
おわりに
職場に関する情報は、育児介護休業法の他にも様々な法律によって公表すべき事項や対象となる企業が定められています。職場に関する情報が公表されることによって、求職者が、入社後の働き方を思い描くことができるようになります。企業にとっては育児や介護をしながら働くことができる職場環境、周囲でそれを支える労働者の働く環境を整理し、どのように業務を効率化できるかを再検討し、従業員と共に持続可能な環境を図るための工夫が求められています。
自社にとって最適な勤務制度や労働条件の設定に関するご相談やご質問は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。職場のモチベーション向上を図りながら、働きやすい職場環境づくりをサポートいたします。