はじめに
地域別最低賃金額は、例年10月に改正されています。最低賃金について議論している厚生労働省の審議会は物価の上昇が続いていることなど踏まえ令和6年度は前年度より50円引き上げ、全国平均では時給1054円とすることで決着しました。これを受けて、都道府県ごとの審議会で労使の話し合いを経て、例年8月下旬~9月上旬には各都道府県における10月からの最低賃金額が発表されます。
今回の記事では、令和6年10月から改定される地域別最低賃金についての情報に加え、企業が知っておくべき国の支援策についてご紹介します。
令和6年10月からの最低賃金額【福岡県】
令和6年10月から施行される新たな最低賃金額は、全国的に見ても過去最大の引き上げ幅となっています。例えば、福岡県においては、昨年度より51円引上げて1時間992円に改正される予定です。この改定により、労働者に対する適正な賃金の支払いを確保するための取り組みが求められます。
福岡労働局:福岡県最低賃金の51円引上げを答申 - 福岡県最低賃金額は992円へ
最低賃金額上昇の変遷
最低賃金は、毎年着実に上昇してきました。当事務所が所在する福岡県においては、平成29年には全国平均で789円だった最低賃金が、令和6年度には992円に達し、賃金額の上昇が継続的に行われています。このような背景から、最低賃金の引き上げは、労働者の生活の質向上を目指す一方で、企業にとってはコスト増となる可能性が高まっています。
年度 | 最低賃金額:時間額(円) | 引上げ額(円) | 引上げ率(%) |
平成 29 年度 | 789 | 24 | 3.14 |
平成 30 年度 | 814 | 25 | 3.17 |
令和元年度 | 841 | 27 | 3.32 |
令和2年度 | 842 | 1 | 0.12 |
令和3年度 | 870 | 28 | 3.33 |
令和4年度 | 900 | 30 | 3.45 |
令和5年度 | 941 | 41 | 4.56 |
地域別最低賃金は誰に適用される?
まず、地域別最低賃金額とは、産業や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される賃金額の最低基準です。各都道府県に1つずつ、全部で47件の最低賃金が定められています。
ここでいう『すべての労働者』とは、原則として、パートタイマー、アルバイト、臨時、嘱託など雇用形態や呼称に関係なく、各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に適用されます。なお、派遣社員には、派遣先の事業場に適用される最低賃金額が適用されることとなりますので、派遣会社の場合は、派遣先の最低賃金を把握しておくことが必要です。
最低賃金未満の賃金が支払われた場合はどうなる?
最低賃金以上の賃金を支払っていない場合、企業は法的な制裁を受ける可能性があります。具体的には、労働基準監督署からの是正勧告や、最低賃金法に定められた罰則(50万円以下の罰金)が科されることがあります。このため、企業としては最低賃金を守ることが不可欠です。
最低賃金以上の賃金となっているかどうかを確認する方法については、当事務所が昨年の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。
国からの支援策
最低賃金の引き上げに対応するために、国は企業向けにさまざまな支援策を用意しています。支援策を活用することで、コスト増への対策と、労使にとってより良い労働環境を整えることが可能になります。以下に代表的な支援策をご紹介します。
業務改善助成金
生産性向上に寄与する設備投資を行う中小企業に支給される助成金です。業務の効率化と併せて、賃金アップを実現する企業にとって有効な支援策です。
働き方改革推進支援助成金
労働時間の短縮や生産性の向上を進める場合の助成金です。休暇取得などの働き方改革を推進し、従業員のワークライフバランスの向上を目指す企業に適しています。
キャリアアップ助成金
非正規労働者の処遇改善を目的とした助成金です。正社員化や賃金規定の改定を行う企業が対象となり、一定の要件を満たすことで支給されます。
最低賃金の引き上げに伴う対応策について、社会保険労務士としてもサポートできることが多岐にわたります。例えば、キャリアアップ助成金の申請支援や、働き方改革推進のためのアドバイス、さらには業務改善助成金を活用した労働環境の改善支援などがあります。企業ごとの状況に応じて最適な支援策を提案し、確実な対応をサポートいたしますので、ぜひご相談ください。
おわりに
令和6年度の最低賃金改定に対応するためには、企業としても準備が必要です。国の支援策を上手に活用し、企業経営の負担を軽減しつつ、従業員にとっても働きやすい環境を整えていきましょう。当事務所では、企業様のニーズに合わせたサポートを提供しております。お気軽にお問い合わせください。