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【福岡県】最低賃金が1,057円に引上げへ|年収の壁・扶養範囲への影響と中小企業の実務対応策を解説

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【福岡県】最低賃金が1,057円に引上げへ|年収の壁・扶養範囲への影響と中小企業の実務対応策を解説

福岡県でも最低賃金が初の「1,000円超え」へ

福岡県最低賃金審議会より、令和7年8月20日付で福岡労働局に対し、令和7年度に改正される地域別最低賃金についての答申が行われました。これにより、令和7年11月16日から、福岡県の最低賃金は現在の【992円】から【1,057円】へ引き上げられる見通しです(2025年8月20日報道時点)。昨年からの改定額は+65円、実に約6.6%の上昇であり、最低賃金が1,000円を超えるのは福岡県では初めてのことです。

最低賃金の引き上げは、労働者の生活の安定や労働条件の改善に寄与する一方で、企業の人件費構造や雇用管理にも影響を与えます。
特にパート・短時間労働者を多く雇用している企業にとっては、“年収の壁”に早く達するケースが増えることで、パート労働者からの「扶養を外れないために勤務時間を調整したい」といった申し出が考えられるほか、労働時間やシフトの見直し、社会保険加入の判断、賃金体系の再設計など、企業の実務対応が一層複雑になることが想定されます

最低賃金が上がると“年収の壁”が近づく?

最低賃金の引き上げによって、「年収の壁」に早く到達してしまう労働者が増える可能性があります。特に影響が出るのが、「扶養の範囲内で働きたい」という希望を持つパート労働者です。

社会保険上の“年収の壁”とは?

よく知られている、106万円と130万円といった社会保険の加入義務が生じるラインです。

年収の壁内容
106万円の壁一定の企業(社会保険の被保険者数51人以上)で働く場合、要件を満たすと社会保険(健康保険・厚生年金)に加入が義務化されるライン。
130万円の壁扶養に入っている配偶者の健康保険の扶養から外れ、自ら保険に加入する必要が出てくる基準(被扶養者認定の基準)。

最低賃金が上昇することで、従来と同じ労働時間でも収入が増えて、社会保険加入の要件に該当する人が増えることが想定されます。これ以外にも、所得税や住民税の非課税ライン(いわゆる「103万円」「100万円」の壁)などもあり、パート労働者からの「これ以上働くと扶養を外れてしまうため、シフトを控えたい」という申し出への対応などの現場の変化が懸念されます。

雇用側が感じる“制度ギャップ”と実務負担

最低賃金の改正に加え、年収の壁の存在によって、企業側が感じる実務上の課題として以下のようなものがあります。

  • パート労働者からの就業調整による労働時間の短縮申し出がある
  • 繁忙期でも十分な労働時間が確保できず、人手不足が悪化する不安
  • 社会保険加入者の増加により、手続きや保険料負担の増加の懸念
  • 長時間働く人材を採用しづらくなり、戦力の分散・教育コストが増える

社会保険制度は、非正規労働者の社会的保障を拡充するという点での役割・効果を期待されていますが、他方で「想定外のタイミングで保険加入の対象となり、人員配置や就業時間の見直しが必要になる」といった戸惑いの声も見られます。また、扶養の範囲内での就業を希望する労働者から勤務時間や日数の調整を求められることもあり企業には今後、より一層の対応の幅と柔軟さが求められる場面が増えるでしょう

中小企業に求められる対応策とは?

最低賃金の引き上げが目前に迫るなか、「どう対応すべきか」とお悩みの企業様も少なくありません。
特に中小企業では、限られた人員や資源の中で対応を進めなければならないケースも多く、「今からできる現実的な対策」が求められています。

もちろん、すべての課題を一度に解決することは難しいかもしれませんが、いま検討を始めておくことで、将来的な負担やコストの抑制につながる可能性があります。

そこでここでは、最低賃金の引き上げに向けて、中小企業が現実的に取り組みやすい備えや制度活用のヒントをご紹介します。

従業員との対話と労働条件の見直し

最低賃金の引き上げに伴い、賃金だけでなく労働時間や働き方に関する見直しが必要になる場面も増えてきます。
たとえば、扶養内での就業を希望するパート労働者から「勤務時間を減らしたい」と相談を受けるケースや、逆に「保険加入をしてもいいから、もっと働きたい」と希望する方も出てくる可能性があります。

こうした個別の希望や状況をすり合わせるためにも、企業側が早めに従業員と面談の機会を持つことや、働き方の選択肢をわかりやすく提示することが重要になります。

ポイント

就業規則や賃金規程が現状の実態に合っているかを確認し、「誰が・どんな条件で・どこまで働けるのか」を整理しておくことが、今後の対応をスムーズに進めるカギとなります。

社会保険加入への不安を軽減するための情報提供と制度見直し

最低賃金の上昇にともない、社会保険の加入対象となる労働者の増加が見込まれます。その結果、「扶養から外れたくない」「年金は先の話だから、今の手取りが減るのは困る」といったパート労働者からの不安や疑問の声があがることも考えられます。

こうした不安を和らげ、前向きに働き続けてもらうためには、企業側からの丁寧な情報提供や対話の場の確保が大切です。

ポイント

「社会保険に入ることでどんなメリットがあるのか」(例:将来の年金額、万が一の保障、産休育休との関係など)をわかりやすく伝えることが、納得感のある選択につながります。

人手不足時代に対応する業務効率化と働き方の見直し

最低賃金の上昇がコスト増加に直結することから、限られた人材でどう効率よく業務を回すかという視点は、ますます重要になります。

たとえば、

  • 繁忙期の業務分散や、業務マニュアルの整備
  • 一部業務のアウトソーシング化やシステム導入
  • パート・短時間労働者のスキルアップと業務の切り出し
  • 助成金制度の活用

ポイント

たとえば「働き方改革推進支援助成金」や「業務改善助成金」は、業務効率化や賃金上昇に対応した助成金であり、各助成金制度の要件を満たした場合に一定額の助成が行われます。このほか、パート労働者の待遇改善として活用可能な制度として、「キャリアアップ助成金 正社員化コース」や「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」「キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース」もあります。

まとめ|“年収の壁”への理解と現場支援のバランスを

最低賃金の引き上げは、労働者の生活向上につながる一方で、中小企業の人事・労務管理に新たな悩みをもたらします。企業としては、制度の正確な理解と現場ニーズの把握、そして持続可能な雇用設計を目指すことが必要です。

労働時間・賃金体系の見直しや社会保険対応でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。現場に即した制度設計や人事対応をご支援いたします。

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